(14)
「別にいいだろ、そんなん……」
ジェドは不愛想に、青い焚火の傍に寄る。
シェナは彼に膨れ面を向けるも、再び、戸惑う相手に笑いかけた。
だが、未だ顔は強張っており、支えられていたフィオの腕から擦り抜けると、震えた息を吐く。
そしてようやく
「……リ……ヴィア……」
「リヴィア! そうか!
あの時グリフィンそう言ったんだ!」
シェナは、漁船で聞き取れなかった彼の発言と、部分的に記憶していた言葉の一致に喜ぶ。
フィオはリヴィアを火の傍へ促すが、彼女は動こうとしない。
片や、気分が落ち着いたジェドは、本と睨み合っている。
ビクターは、立ち込める青い炎に釘付けだ。
くべていた薪を一本引き抜いてみると、魅力的な真っ青の松明に見惚れてしまう。
シェナが火の傍に座ると、リヴィアを見上げて隣の地面を叩く。
「火、ありがとう」
フィオが礼を伝えた途端、リヴィアは激しく咳き込んだ。
酷く苦しそうな様子を気にかけ、フィオは彼女の背中に触れようとする。
しかし、素早く拒まれてしまった。
リヴィアは皆に背を向けると、滝壺の方へふらふらと向かっていく。
一体どうしたのかと、四人は不安気に彼女を見守った。
リヴィアが滝壺の縁までやって来ると、膝から崩れ落ちる。
フィオが慌てて駆け寄るが、リヴィアはそのまま水の中へ這って進んだ。
その時見た光景に、四人は小さく声を漏らす。
リヴィアが滝壺に入った瞬間、その周りに青白い光が灯り始めた。
水面を漂っていた淡い白い光が、彼女の方へ集まっていく。
フィオの周りに三人も駆け付け、その光景を穴が開くほど見つめた。
四人はこの水が持つ効果を思い出していたが、どういう訳か、そこに浸かるリヴィアは苦痛の声を零しながら身震いしている。
尖った爪が両腕に食い込みそうだ。
彼女の周りに集まる光はやがて、灰色の髪に多く付着していた青い汚れを綺麗に消していく。
歯が勝手に音を立てるのを、懸命に食いしばっていた。
ビクターは首を傾げる。
回復するはずの水が、彼女には殆ど効いていないように見えてならない。
「なぁ、痛そうだぜ?」
ジェドが眉を顰めて心配した時、何か別の気配を感じた。
「どうしたの?」
シェナは、急に忙しなく辺りを見渡すジェドを見て、警戒する。
すると、唸り声が聞こえた。
四人は萎縮し、脳裏にある映像が過る。
これはもしや――
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




