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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第六話 空島
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(12)




「ここほら! まだ何か書いてある」




フィオはどうにか、分かる単語を拾い読みしていく。




「人間かしら……人間の……世界……違う……?」



「同じ感覚でいるなって言いてぇのかもな」




ジェドは何となく、そのように置き換えて読み取った。




 一方、ビクターは溜め息を吐く。

火を起こせたならば武器にもなったが、諦めるしかない。

さてどうするべきかと踵を返した時、辺りを観察すべく顔を上る。

その時、正面に細長い影を捉えた。

こんな近くに木があっただろうかと目を凝らすと――輪郭が徐々に浮かび上がった途端、叫んだ。

それに後の三人も声を上げ、ジェドは思わず本を落とす。

また、冷たい突風が薪を激しく払い除けて散乱させた。






 現れた影は、一つ大きく靡くと静かに収まる。

四人は寄り合い、一歩また一歩とあとずさりしながら武器を構え、息を震わせる。

よく見ると、湖で争ったローブの者だ。

絡まる灰色の長髪が揺れる隙間から、片目に灯る青い光が垣間見えてはそっと消える。

また飛びかかるつもりかと、槍とライフルを構える手に力が入った。

しかし、相手はやけに大人しく、来る気配がない。

静寂が未だ続く最中、ようやくローブの隙間から真っ白なか細い手を見せた。

警戒する四人は更に引き下がる。

その動きに警戒の目を向けながら、亡霊のように佇む相手は、二本の指を口の横に添えた刹那――息を吹きかけられ、ほんの僅かに残されていた薪の小山に、真っ青な炎が大きく立ち上がった。




挿絵(By みてみん)




 四人は瞬く間に伸びる炎に一驚を上げたが、見た事のないその光景に大きく感嘆してしまう。

真っ青な火花を上げる焚火は冷たそうだが、自分達が知るそれと同じように温かく、自然と引き寄せられていく。




 しかしまだ、焚火越しに互いの見つめ合いが続いた。

相手は一言も放たないまま、何を確かめているのか。

火を灯した様子から、攻撃するつもりはないのではないか。

そう読んだジェドは、皆に目配せをし、構えた武器を仕舞う。

すると、向こうから徐々に近付いてきた。

拙い足取りは、怪我を負っているのか。

体も不安定に揺れ、上手く軸を保てていない。




 その者は、髪の隙間から漏れ出る眼光を弱めた。

しかし、移動しながらの観察は続いている。

四人はその動きを首だけで追い、片時も目を離さなかった。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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