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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第六話 空島
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(11)




 ここに浮上した際は酷い疲労感だったが、気付けばすっかり楽になっている。

大事が立て続けに起こり、体を気にする間などなかったとも思うが、それでも妙だ。




「腹、減ってるか?」




続く問いかけに、三人は黙って首を横に振る。




「喉は?」




いいや。

どういう訳か、それらによる苦を感じない。




「あたし達、人間じゃなくなったの!?」




シェナが体の不気味さに声を上げる。

フィオもまた目を見張ると、ジェドが腰に提げていた本を手にした。




「書いてるかも」




ロープを解き、破れないようにそっと開く。

皆は頭がぶつかるまでに寄り合い、文字を辿った。




「これ! 水って書いてあるんじゃない?」




フィオが単語を指差した。

ビクターは、滑り落ちるライフルを背負い直しながら、その文字から先を追う。




「治……る……」




深海に眠っていた本である上に、これまで衝撃を受けてきた影響で文字が滲んでいた。

そんな中、辛うじて拾い読みできた単語だったが




「何が?」




シェナがビクターを見上げる。

彼は唯一把握できたそれについて少し考え、ふと、腕や首など肌が露出している部分を見ていく。

また、三人の事も同様に見渡した。




「どうかしたの?」



「何だよ」



ビクターは、フィオとジェドに目を見開いていくと、慌ただしくズボンの裾を捲って足を見た。




「傷がない」




四人は遊んでいる最中、よく怪我をした。

掠り傷や切り傷の跡が細かく残っていたのだが、それらが綺麗に消え、まるで肌が生まれ変わったようだ。




「すごーい! 何で!?」




感動するシェナを横に、ジェドは滝に目を向ける。

遥か高い所から轟々と滝壺に落ち、恐ろしい森の縁を巡るように消えていく様子を観察した。

白の淡い光を点々と漂わせる不思議な水から、想像を膨らませていく。




「あの湖……ならここの水も、触れたら治るのか!?」



「だったら枯れた木や草にかけたら元に戻るかしら?」



「でもそれ、大変じゃない?」




シェナの声を背に、ビクターは森の入り口まで駆けると、枯れた枝葉を適当に握っては滝壺に投げ入れた。

皆はじっと、緩やかに流れていくそれらを凝視する。




「……枯れたままね」




閃いたフィオは、寂し気に呟いた。

ビクターは、流されていくそれらをぼんやり見つめながら、考え事をする。




「あ、火」




本のページを捲ったジェドが、次の単語を見つけた。




「起こ……せない!? 起こせないだって!?」




実に残念な情報に、彼は堪らず声を上げる。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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