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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第六話 空島
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(8)




 不気味な植物のトンネルを潜り、互いの姿を見失うまいと、体を寄せ合いながら進んだ。

羽虫が耳元で音を立て、シェナが咄嗟に首を激しく振り、仰いで追い払う。

更に奥から歯を鳴らすような音が聞こえ、何かが移動しているのか、草が揺れる音も重なる。




 最後尾のジェドが念の為、ライフルを手に周囲を警戒する。

前を歩くフィオも、槍を最長に引き延ばして握っていた。




 そこへ急にシェナが立ち止まり、背後の二人がぶつかる。

何事かとジェドが小声で放つが、彼女は気にもせずじっと耳をすませていた。




 ビクターが、後に続く皆の足音が消えた事に慌てて振り向く。

数歩先で留まる陰をどうにか捉えた。




「早く来い」




ぐずぐずしていては、何かがまた襲いかかってくるかもしれない。

先程からずっと、聞いた事のない鳴き声に背中が凍るようだ。




「近くに水があるかも」




急に駆けつけたシェナは更に、微かに冷たい風を感じると訴える。

彼女は今よりもずっと小さな頃から、どういう訳か風に敏感だ。

本人もその理由が分からず、皆も同じではないのかと不思議そうに話していた事がある。




 皆は、水の音を聞こうと耳をすませた。

しかし、奇妙な鳴き声と草木の騒音がどうしても邪魔をする。

水の音と言えば、フィオは浜に倒れていた際に、地面からそれを聞きつけた事を思い出した。

だがこんな真っ暗で怪しい空間だと、水の在り処など分からない。




「このまま進む」




ビクターがシェナの手を取ると、後の二人にも手を繋ぐよう促した。

先へ進めば進むほど、暗さが一層増している。

はぐれてしまえば、そう簡単に見つけられないかもしれない。




「あの照明が欲しかったわね……」




フィオの呟きに、ビクターが苦笑いする。

ここぞという時に、持っていないのだから。






 そこへ、何かが金切り声を上げながら頭上を通過し、枯れ葉や蔦が雨の如く降り注いだ。

皆は一驚を上げて身を縮める。

体を弾いた小枝が地面に落ちる度、青白い光が美しく弾いた。

それに目を奪われる余裕もなく、横の茂みの奥からの唸り声にあとずさる。

温い風が全身を這い、何かに触れられているようで肌が粟立った。




「今度は何だ!」




ジェドが苛立ち、気配がする方に銃口を向ける。

繋ぎ合う手が離れた時、大量の汗が滲んでいる事に気付いたフィオは、ジェドを気にした。

前のめりになる彼もまた、恐怖を言葉にしない。

ビクターも同様にライフルを構えていたが、背中に回すと行き先に目を向ける。

恐らく、この道が続いているだろう。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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