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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第六話 空島
54/133

(5)




 燃え尽きたのかと、ビクターは相手から銃口を静かに下ろす。

そこへまた、竜が唸り声を上げた。

今度はビクターを睨みつけている。

ジェドとフィオは引き下がった拍子にビクターの背中にぶつかると、倒れるローブの者を彼の肩越しに覗いた。




「……もしかして」




ジェドの予想に小さく頷いたビクターは、ライフルを背中に回すと、ぐったりする相手にしゃがむ。

そして、突っ伏す頭に手を伸ばすのだが――




「っ!」




人ではない威嚇の声を短く上げた直後、ローブから青い目を剥き、顔を露わにした。

灰色の長髪が細くかかる下は、左半分が岩肌のように茶色い。

腐食しているような様は、竜の状態と一致する。




 ビクターは、あまりの様相に後退る。

その者は痛みに唸りながら敵視を向け続け、慎重に身を起こす。

屈んだまま、腹の辺りで掌を上向きにさせ、爪を立てた。




 それに気付いたシェナは、不意を突くようにその者の正面から激しく覆い被さった。




「シェナ!」




三人の叫びと同時に、二人は呆気なく転倒する。

それを目にした竜が怒りに悲鳴を上げ、ついに、太く青い炎を噴いた。




 ジェドとフィオは透かさず横転して躱し、ビクターも後方に激しく転ぶ。

シェナはローブの者を強く抱きしめるように顔を埋め、叫んだ。




「助けにきたのよっ!」




その瞬間、真下から風が吹き上がると、白い砂煙が輝きを放ちながら盾になり、瞬時に炎を遮った。

焼け焦げて落ちた砂は、あっと言う間に元の光る白砂に戻る。




 その者はシェナに圧し掛かられる中、髪の影に佇む青い目を見開いていた。

苛立った竜が再び口を開けると、間髪入れず遮ったのは威嚇の声。

それは甲高くもか細く、シェナの真下から放たれた。

竜はその声を聞き入れるように、静まった。






 辺りが水の音だけになると、シェナは押し退けられて呆気なく転ぶ。

上体を起こしたその者は、立ち尽くす四人を順に見た。

警戒心に満ちた真っ青な片目は、驚きと緊張に揺れる。

何かを言おうとしているのか、唇も震えていた。

立ち上がった拍子にローブが脱げると、露わになった灰色の髪が青い何かで凝固し、酷く汚れていた。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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