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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第六話 空島
52/133

(3)




 ジェドが森の奥に目を光らせていると、ただならぬ気配を感じ、数歩前に出る。

辺りに目配せすると、遠くから低い音が押し寄せてきた。




「何だ……!?」




ジェドは背中のライフルを構えて気付く。

正面からではなく背後かと、誰よりも俊敏に警戒する彼。

それに吊られ、三人も素早く湖を見た途端――吹き荒れる風に紛れて巨大な水柱が立った。

その風圧と激しいしぶきに、皆は転倒してしまう。

その騒ぎに、シェナがようやく飛び起きた。






 大波が岸辺に打ち上がると、皆に覆い被さる。

流されて転がったシェナが目を凝らすや否や、悲鳴を上げた。




 広々と立ち込める靄の向こうに、何やら巨大な影が佇んでいる。

それは、赤と青の鋭い光をぼんやりと浮かべていた。

温い風が吹くのは、息遣いか。

縦に伸びる影はやがて、低く屈むように小さくなると真横に広がり始める。




 皆は固唾を呑み切れない。

口内が乾いてしまうほど、呆気にとられていた。




 靄が拭われていくと、大きく広がるそれは、黒く、傷だらけの翼を持っていると分かった。

輪郭を辿るうちに露わになったのはなんと、竜。

白と黒が入り混じる鱗に、青い汚れが付着していた。

体のろことどころや、顔の半分はまるで岩が食い込んでいるように凹凸がある。

岩肌から放たれているのは、赤い眼光。

太いロープを思わせる二本の髭は、まるで生きているようだ。




 竜は勢いよく羽ばたくと、巨大な口を天に向けるや否や、一帯を揺らすほどの叫声を高らかに放つ。

四人は共鳴するように激しく震えた。

重圧を感じる鳴き声に、瞼が勝手に下りていく。






 気が済んだのか。

竜は静まると、ジェドに低く威嚇する。

彼は咄嗟に立ち上がり、ライフルを向けた。




「撃つなよ」



「分かってる」




彼はビクターの警告に、竜に目を向けたまま返事をした。






 「何か来る!」




フィオは別の気配を感じ、ビクターとシェナと共に森に集中する。

ジェドは彼らに背後を任せ、竜を警戒していたその時――竜が再び、浜から森にかけて撫でるような咆哮を上げた。

皆の体は、それに圧迫されるように低くなる。

そこへ、遠くで草木が揺れる音がした。




「伏せろ!」




察したビクターの声に、甲高い威嚇の声が合わさる。

正面ではなく真横から、ビクターに向かって何かが激しく飛びかかった。




 派手な金属音が鳴り響くと砂浜を乱暴に滑る音が通過し、止まった先で軋み音が小刻みに立ち始める。




 シェナとフィオは間一髪地面に転び、飛び込んで来た何かとの衝突を免れた。

徐々に顔を上げると、ビクターの光景に震え上がる。

彼は何かによる直接的な攻撃を、必死に阻止していた。

三人は、どうしてよいか分からず驚愕する。

ジェドもまた、竜とビクターを目だけで往復しながら焦っていた。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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