(10)
信じ難い事に、四人が上昇した途端、荒天が一瞬にして治まった。
まるで空に見放されるような感覚がする中、漁船がただただ崩落していく。
「何て事っ……!?」
アリーが長老と共に家を飛び出し、沖で起こる事態に声を裏返す。
震撼をもたらすそれに、長老はどうにか立位を保ったまま一切の目も逸らさない。
呼吸は今にも止まりそうだ。
沖に落ちた雷は、まるで天に導く路に思えた。
その際、比較的大きな四つの金色の光をが観測できた。
あの子達は昇ってしまったと、確信せざるを得ない光景だった。
長老は杖を落とし、膝から崩れ落ちる。
アリーは彼の背に震えながら寄り添い、困惑を抑えきれずに涙した。
島に残る他の者達もまた、沖の状況に震える。
四人を慕う小さな子ども達も、急な出来事にしばらく泣き止まなかった。
あの場所にだけ起きた異常事態は忌々しい事に、光が消えると共に静寂に包まれる。
一刻も早く救助に向かうべく、留守番をしていた者達は慌ててジェットスキーを出し、漁船を目指した。
穏やかな潮風が、焼け焦げた漁船の臭いを運んでくる。
漁師達は流木に掴まり、救援に手を振り続けた。
負傷したカイルの酷い有様を目の当たりにした仲間達は、真っ先に彼を引き上げる。
果たして応急処置で助かるのか。
こんなになってしまった世界に、十分な手当てができる環境などない。
ただ、薬草として使える植物ならあった。
奇跡的に、その道に関する知恵を持つ者もいる。
何とか手を尽くして見せようと、仲間はただひたすら島に急いだ。
子ども達とグリフィンの行方を問われても、漁師達は守り切れなかった無念に駆られ、何も返せない。
漁船は次第に鎮火すると、沈んだ。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




