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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第五話 消失
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(9)




 そこが引き寄せる力は、この上ないものだった。

四人は、話に聞いていた以上に息が苦しくなり、抗えぬ速さで体が海面に引き寄せられていくのを犇々と感じた。

目は開けられないが、分かる。

辺りが眩しい金色に輝き、更なる眩しさに顔を覆った。

背中や腹から引っ張られているような体勢から、一切身動きができない。

顔の向きすら変えられず、呼吸は浅くなり、意識は遠のいていく。

そして、肌に風が触れるような感触を覚えた。

どうしてこんなに寒いのか。

その疑問を最後に、意識は深い闇に閉ざされた。






 海面から漁師達が顔を出す。

グレンとマージェスは、抱えていた筈の子ども達がいなくて困惑した。

レックスは、頭部から流血するカイルを抱え、どうにか浮力を保っている。

最悪の状況にマージェスが、見えない魔女に怒号を飛ばす傍ら、レックスとグレンが血眼になって四人を探すが、いない。




「消えたぞ!」



「そんな訳あるか!よく探せ!」




焦るグレンの傍で戸惑うマージェスは、再び潜ろうとした。

その時、グレンが驚愕する。




「見ろ!」




激しい炎を上げる漁船をよそに、皆は目を疑う。

数々の金色の光の粒が集まり、柱のようなものを出現させながら浮上していく。

目を凝らせば大粒のものが四つ。

遥か彼方へみるみる上昇してしまうそれらに、血の気が引いた。

そんな彼らを、炎に覆われた漁船が明々と染めている。




「くそっ!」




グレンが海面を叩くと思わず嘆いた。

行かせてなるものかと散々思っていた事なのに。

どうして強引にでも島に置いてこなかったのか。

何故、ここへ乗せてきてしまったのか。

後悔が延々と巡り巡る。そのままグリフィンの身に起きた事態を思い出すと、更に気がおかしくなる。

己にただただ腹を立てながら、無理だと分かっていても、皮肉なほどに美しい光に手を伸ばしてしまう。




 レックスは声を失って浮かぶマージェスにカイルを預け、すぐさま潜って海面を見上げる。

まだ間に合うならば一緒に行く。

彼らはまだ、ただただ大きく振る舞う子どもなのだから。

しかし、彼は生気を失い絶望する。

身を翻らせたそこにはもう、ただ真っ黒な海面に、炎の光が明々と波に揺れるだけだった。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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