表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第五話 消失
47/133

(8)




 耳を劈くような雷鳴が轟く中、漁船の角度が戻り始める。

マージェスは船室のドアの縁をどうにか掴んでいたが、起こる縦揺れに身がよろけてしまう。




 武器の棚に背を預けていた二人は、傾斜が緩やかになってすぐ駆け上がり、外に勢いよく飛び出した。






 稲光は再び、周囲を白光で覆い尽くす。

皆は瞬時に瞑った目を開くと、あの両目が天に再現された。

ビクター、ジェド、フィオ、シェナ、最後に大人達と、素早く視線を走らせては嗄れ声の嘲笑が耳になだれ込む。






 フィオは目を瞑りながら背を向け、耳を塞いだ。

その時、暗い視界に何かが過る。それにもまた恐怖するが、目を開けても巨大な目玉がある。

瞼の下で、このまま漁船から落ちるのではないだろうかと疑った。

またそう感じてしまうのは、目のずっと奥に見た画が影響していた。

自分達の肌を冷たい何かが覆い、苦しむ光景が霞んでは、消えた。






 シェナが宙の両眼に叫ぶなり、カイルが透かさず彼女を抱えて目を伏せさせる。

マージェスが起き上がるとフィオを引き寄せ、立たせた。

レックスが背に回していたライフルを宙の両眼に向けながら、ジェドとビクターの前に立つ。

カイルとグレンがその背後に回り、二人を船室に引き戻そうとした、その時――




挿絵(By みてみん)




 岩をも砕くような破壊音が、落雷に合わせて天を揺らす。




 轟々たる雷に皆が掻き消された。

全身に風を感じたかと思えばどこかに大きく叩きつけられ、全身に衝撃が走る。






 冷感が体中に迸り、息ができない。

フィオは、髪に頬を撫でられるところ薄目を開く。

自分達が海に落ちた事に気付き、慌てて水を掻いた。

霞む視界を見渡すと、他の皆も藻掻いている。

息を吸う間も無く海に沈められ、焦る事で余計に酸素が失われている。

大人達は懸命に海上に向かおうとする最中、四人の行方を探していた。




 ビクターが近くで溺れかけるシェナを掴み、襲う息切れを堪えながら引っ張る。

その近くでジェドが、俯せに沈んでいたところ身を大きく翻した。






 カイルとレックスが海面に顔を突き出し、咽る。

息を吸い込む度に、海水が妨げた。




「あの子達は!?」




確認できなかったカイルが焦る横で、レックスが救助のために潜ろうとするところ、マージェスとグレンが顔を突き出した。

二人は息継ぎすると、すぐさま四人の元へ向かう。

それにカイルも続こうとした時――漁船が爆音を上げると炎に包まれ、飛散した巨大な木材の破片が彼の頭部に衝突した。




挿絵(By みてみん)




 目撃していたレックスが、気を失って水没するカイルを叫んだ時、青白い乱雑な閃光が着水する。




挿絵(By みてみん)



挿絵(By みてみん)




それは広大に映し出された。




挿絵(By みてみん)




 海中で、グレンとマージェスに引っ張り上げられる四人。

そんな中、彼らは視界いっぱいにその世界を捉える。

絡みつく大きな腕の隙間から、それぞれが細い腕を抜き出し、海面に映る群青色の世界に、躊躇わずに手を伸ばした。




挿絵(By みてみん)









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ