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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第五話 消失
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(7)




 グリフィンの足先が徐々に白くなりながら乾きだすと、幾多もの亀裂が走った。

足はみるみる欠け、形が崩れていく現象はまるで風化か。

突風が船内の床を力強く吹き抜けると、彼の足が完全に砂と化し、崩れ、流れるように白砂が這う。

膝、大腿、腹、腕、手先、首と、みるみる砂化は彼自身を奪っていく。

誰かに手を伸ばそうとすれば腕は崩れ落ち、助けてと叫ぼうにも声が断たれ、喉が消え、顔が白く覆われた。




「待て!」




ジェドが硬直するビクターを乱暴に押し退け、上半身をまだ維持するグリフィンに抱きつくが――両腕の中から大量の砂が擦り抜け、彼は、床に音もなく崩れ去った。




 目前で起きた悍ましい末路に、皆の悲鳴が飛び交う。

フィオとシェナは駆け付けると、無我夢中で砂になったグリフィンを搔き集め、戻って来いと言いながら泣きじゃくる。

ジェドの手足は震え、グリフィンの砂に塗れる自分の体に呼吸を荒げる。

ビクターは足から崩れ落ち、震える体を上回る胸痛に苦しみ、肩でする呼吸も間に合っていない。






 漁船が大波を乗り上げながら横揺れし、潮が容赦なく大風と共に流れ込む。

グリフィンの砂は激しく舞い、流れてしまう。

皆は傾いた漁船に弄ばれ、されるがまま転がされては船縁に激突し続ける。




 間髪入れずに立ち続ける荒波に、いよいよ漁船は縦向きになり始めた。

木材が軋む音から、船が両断される恐怖に陥る。

普段あんなに冷静な大人達までが声を上げ、判断が鈍っていた。

その様子に四人はより震え上がる。




 漁船が傾斜を強める頃、船室のドアが全開した。

その状況を目にしたビクターが意を決して、傾斜を利用して船室に激しく滑り込む。






 ビクターは船室奥の壁に激しく転がり込んだ。

乱雑に物が落下すると、目に付いた物や触れた物を片っ端から手にして装備していく。




(何でもいい何でもいい!)




全身に残る震えで、手にした物が時折転げ落ちた。

それでも、治るのを待つ場合ではない。



 そこへ同じく、ジェドが転がり込んだ。

彼もまた、身を軽々起こすと武器を集める。

互いに無言のまま一致する決断が、回収速度を上げていた。

槍、ナイフ、ライフル、弾しかない。

未だ胴震いする中それらを背中と腰に引っ提げ、ようやく船体の傾斜が緩やかになる機会を待つ。

互いに荒い息を立てながら肩越しに目を合わせると、悪戯に笑う。

そこへ、マージェスが必死に床を這い、船室を覗き込んだ。




「なっ!?馬鹿野郎、何してる!」



「っ!?おっちゃん手ぇ放すなよ!」




やっと出た咄嗟の一言。

彼まで落ちてこようものならこちらが圧迫され、それこそ窒息する。

ビクターも、横で大きく首を横に振り続けていた。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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