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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第五話 消失
43/133

(4)




「なんだよ。

だったらそれ歌ってりゃいいんじゃねぇの?」




再生と言うならばと、ジェドは首を傾げた。




「ああ、だが、そうもいかなくてな……」




グリフィンは、ジェドの意見も優しく聞き入れながら表情を曇らせる。




「呪いは、生物を豹変、或いは死に至らしめる……

植物の大半は枯れ、生気を失っている……

島はほぼ、魔女に呑まれてるんだ……」




ジェドは船縁であぐらをかき、想像する。




「どうしてその精霊と一緒に戦えなかったの?

助けようとしてたのに」




フィオが訊ねる横で、シェナが渡された本に腕を乗せてグリフィンを見上げる。




「仲間も、己の力も殆ど失うと、どうしていいか分からなくなる……俺達は彼らのような魔法使いではないが、気持ちは分かる……きっと彼らも同じで、そんな目に遭えば路頭に迷う……何に頼り、何に縋ればいいか、手立てを失い途方に暮れていて……呪いに侵食されていく居場所を見ている事しかできず、希望が持てない状態だときっと、選択は限られてしまう……俺達で言う、いつかの時のように……」




グリフィンは、世界が沈む最悪の時と空島での事を重ねながら、静かに語った。

四人は当時を知る由もないが、共に生きる大人達に聞いて、何となく想像している。




 しかしその精霊達は今頃どうしているのかと、グリフィンは心配でならない。

そしてふと、小さく何かを呟いた。

シェナは聞き返したが、彼は首を横に振り、微笑むだけだった。






 その時、つい先程まで心地よかった風が冷え始めた。

レックスは水平線に目を凝らすと、嵩張る薄暗い雲を観測する。

煙が立ち込める様子に似たそれは、明らかにこちらへ接近してきていた。

いや、こちらがそれに接近しているのだろうか。




挿絵(By みてみん)




「マージェス!」




 皆が驚いて見上げると、レックスがロープ下降の姿勢になっていた。




「引き上げだ!嵐が来る!ありえねぇ速度だ!

下に合図してくれ!」




マージェスもまた、遠くの空の異変を確認しては了解する。




 グリフィンと四人は騒ぎに船の外を見た。

灰色から黒に変わりゆく雲が異常な速度で迫ると共に、冷たい潮風が強く吹き荒れる。




「わっ!何!?」




シェナは大きく身震いし、風の異変に肌を粟立たせる。

途端、船縁から二発銃声が轟いた。




「上がれー!」




マージェスが海中の二人に合図するや否や、急な波が船体を叩く。

高く、激しいしぶきが上がった。




「碇上げるぞ!」




レックスが着地するなりアンカーリフトの元へ駆け下りながら、動員する。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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