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雲の合間から陽光が射すが、焼けるようなものではない。
穏やかな波は漁船を安定させ、柔らかな風は撫でられているように心地よい。
沈船の場所に間もなく到着する頃、見張り台にいたレックスがロープ下降で着地した。
これを見る度に、楽しそうな上に恰好いいと感じる四人は、試したくてうずうずしている。
レックスが船室に消える傍ら、カイルとグレンが潜水準備をしていた。
四人はその様子を羨ましく眺めている。
船室の戸が開くと、目に飛び込んだものに驚いた。
レックスが手にするのは、二つの大きなシリンダーだ。
見るからに重そうなそれを、彼は軽々と運搬して通過する。
「そんなでけぇのどこにあった!?」
ビクターが声を上げるが、レックスはビクターの方にあったそれを避けた。
「引っ込んでろ」
在り処を教えてもらえる筈もない。
興味深いのはいいが、彼らの手に渡ればずっと海中で過ごしてしまうのではないか。
レックスは想像するだけで恐ろしかった。
漁船に残る者で、普段から備えている漁の道具や、引き上げてそのままの漂流物を片付け、場所を開けていく。
これから引き上げる沈船のように、大きなものを取る際は必ず行う作業だ。
沈船を発見したら、その場で可能な限り船を解体するつもりでいる。
嘗てのように、丸ごと引き上げられる技術があればと思うが、それはまだ夢の真っただ中だ。
まずはすぐに使える物から数回に渡って回収し、リサイクルをする。
マージェスは潜水する二人が梯子を伝って下りるのを確認しながら、彼らが浮上した際の補助の段取りをする。
運よく大災害を乗り越えて残った潜水道具とは言え、完璧な品ではない。
緊急時に備え、手製の縄や浮袋を固めておく。
グリフィンは、東の島の者達の手慣れた仕事振りや、扱う品々を見て圧倒されていた。
一体、嘗てはどういう島だったのだろうと目を疑う。
住んでいる彼らもよく知らないそうだ。
瓦礫に埋もれた元いた世界から、奇跡的に辿り着いた島。
与えらえたこの環境を、心から大切にしながら生きている。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




