(1)
稲光が深夜の空を照らした途端、地面にまで轟いた。
身を飛び上がらせるシェナの叫びが、誰よりも大きく上がる。
冷風が足元から吹き上げ、身震いが襲った。
鼓膜が破れるような雷鳴に皆、腰が抜けたようになる。
鼓動は忙しない。
マージェスは震えて座り込んだシェナを軽々と立たせ、自分に強く抱き寄せた。
耳を塞いで縮み上がる三人はふと、空島を思い浮かべながら沖に目を向ける。
長老やアリー、そしてグリフィンも、外の異変に身を強張らせた。
遠くで落雷が起き、続けざまに稲妻を観測したグリフィンは、あの瞬間を思い出す。
こんな事が果たしてどのくらい続くだろう。
一刻も早く解決したいが、命を落とす事だけは避けねばならない。
その為にも、もう少し考える必要がある。
もたもたした状況もまた歯痒く、両拳を握った。
朝になると、天気が嘘みたく晴れ渡り、久し振りの漁日和を迎えた。
獲物の網を引き上げる前に、沈船の捜索に出ようという話になっている。
グリフィンが同行する傍ら、連れて行けとしつこく縋る四人。
マージェスは否定を繰り返す。
「話の分からん奴だな! ここにいろ!」
「見つけたのは俺達だ!」
ジェドが沈船の事で負けじと吠え飛ばした。
西の情報などグリフィンがいれば十分だと言っても、四人は納得できないでいる。
「大人しく留守番しとけ。
来てもする事なんか無いぞ」
レックスがいつものように頭にバンダナを巻きながら言うと、網を伝って見張り台へ颯爽と登る。
「俺が見張ってるよ」
四人がどうも気の毒に感じてしまったグリフィンは、マージェスに提案した。
「残して行っても多分また……」
マージェスに小声で言いながら、想像してみろと促す。
追ってくる事や、何かを取って使う事も有り得る。
近くでのお目付け役が必要だろう。
「海は入らない。俺と船にいる。
作業に支障を出さないと約束する」
グリフィンは四人を振り返ると笑った。
マージェスは黙るも、まだ表情は険しい。
「それが条件だ。
おじさん達は大事な仕事をする。
君達は俺といる事。いいな?」
四人はそれでもまだ物足りないと言わんばかりの表情を見せる。
しかしシェナが、乗せてもらえるならいいだろうと真っ先に気持ちを切り替え、漁船の中へ駆けた。
それにフィオも続く。
ようやく落ち着いた彼らに安堵するグリフィンも向かうと、背後に残る二人がついて行こうとした。
しかしマージェスが、彼らの腕を鷲掴みするなり大きく引き寄せる。
「絶対何も触るなよ」
「何で俺達にだけ言うんだよ!」
「いつもお前達だからだ!」
ジェドの反発にマージェスが大きく被せた。
これは魔女よりおっかないかもしれないと、ビクターは唇を強く結んだ。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




