表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第一話 西の島の出来事
4/133

(2)




「朝方よりも天候はマシだ。

今の内に、東へなんとしてでも辿り着こう。

さっき出てった奴にも伝えて――」




「バカ野朗!」




長老の隣にいた仲間が吠えた。




「朝方よりマシだ?

だからってこれが海に出られる状態か?

いいか、ここから出たところで、死ぬんだよ!

もう決まってる事だ!

元々虚しい生き残りだ、だったらそれらしく死ぬのが妥当だろ」




「そうか、ならあんたはそうすればいい。

俺は自分の人生は自分で決める」




髭を生やしたは彼は冷静に返し、そっと立ち上がると続けた。




「準備をする。

来る奴は支度をして、船着場へ集まろう」




そう皆に背を向けた時、再びその場が騒がしくなる。




「……私は行く。

あの子の分も生きたい…辿り着いて、生きてみせる」




島に異変が起きてから我が子を亡くした女性が、決意した。

その言葉に奮い立たされた者もいたが、やはり荒海に出る事を恐れ、全員ではなかった。






 島で一番大きな船を出すと、コンパスや武器を積んだ。

僅かであれ、頼る他は無い。

意を決した者達は、東を目指して荒海に出た。






 ずっと住んでいた島が離れ、やがて見えなくなる。

先へ行けば行く程、濃い霧に見舞われた。

思い切ったとはいえ、慣れない環境に飛び込んでいる。

不安と恐怖にみるみる駆られる一方だった。

真昼の筈だというのに、空はまるで夜のように暗く、激しい雨風が船体と肌を打ちつける。






 「何も見えてこない!」




見張り台の仲間が叫んだ。




「方角は合ってるはずだ!」




別の仲間も船首から叫ぶ。




やはり無謀な選択だったのではないかと、後悔してしまう者もいた。

しかし後戻りはするまいと、懸命に行き先と海に目を凝らす者もいる。

ある程度進めば見えるであろう東の島。

だが、荒波が行く手を容赦なく阻み続ける。




黒く冷たい、怒る大海原に人々は身を支える力を奪われる。

寒さで互いに身を寄せ合うだけで精一杯だった。

それでも、船を動かし続ける。

なんとしてでも生き延びるために。




だが、こうして困難に抗うどこかで、本当はあの時見た光の正体など突き止めようが無い事や、この先の命が無いかもしれない事に気付き始めていた。

それでも、島を出ようと皆を集めた彼は、雨水が溜まる船内の床を這ってでも、縁にしがみついて海を睨む。






 その時、稲妻が走った。

岩を打ち砕くような、とてつもない音が体の芯まで震わせる。

立つ事さえままならず、皆は俯せになった。

荒れ狂う波や風雨に船が激しく揺さぶられ、傾いた時、遂に海へ数人が投げ出された。

自然の轟音に掻き消され、船内ではもう、誰の声も聞こえない。




豪雨は体を突き刺すようだ。

先陣を切って出た彼は転倒し、一向に体勢を変えられなくなるところで力を振り絞る。

怒りと焦燥が鼓動を激しく打ちつけ、悔いが合わさり短く大声を放つと同時に仰向けになった。




 そこに広がる天の変わり様ときたら、何とも憎たらしい。

彼は、ありったけの憎悪の念を込め、睨んだ。




 途端、空一帯が白く染まる。




稲妻に続く破壊音が何処からのものか捉える間もなかった。

船は、海の中へ沈んでいく。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ