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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第四話 決心 
39/133

(8)




 ジェドは、打たれた頭頂部の髪を力いっぱい握って俯く。

カイルはクロスボウを眺め、また彼に向き直る。




「これは使えないんだぜ」




ビクターが微かに声を漏らすと、カイルがそれを見上げて笑った。




「検証済みでな。

改造したらなんとかなるんだろうが、今はただのガラクタだ」



「なーんだ」




シェナが呟く。




「守るってのは、相当な決心がいる」




カイルは間を置いてから立ち上がり、手にするそれを元の場所に戻した。

ジェドはまだ、じっと黙っている。




「お前の矢が、レックスに当たるとまずいから、俺に意識が向き続けるようにしたよ」



「あらー優しいのねー」




少々ふざけたレックスの笑い声がし、ジェドはやっと僅かに顔を上げる。

そこには、余裕のある大人が立っていた。

ただの大人ではない。

本当に大きな人である事を、犇々と感じる。




「まぁ己も守ってこそだが、仲間を傷付けたくはない。

皆が無事でないと、意味もない」




カイルは言いながら照明に触れる。

何で持ってるのかと言わんばかりの表情だ。

ビクターは透かさず目を逸らす。




「どうだジェド。

さっきのお前は、後の三人を守っていたか?」




彼は照明の事には言及せず、そのままジェドを見下ろし、続けた。

ジェドの手が頭から落ちる。

まだ何も言わない。否、言えない。




「ビクターの下ろせって声、お前は聞こえたか?」




カイルに耳を傾けながら、ジェドは静かに立ち上がる。

首後ろに触れ、目を逸らして不貞腐れていた。




「俺に矢を向けた割には、お前達は引き下がった。

俺が魔女なら消し飛ばしてる。

冷静、傾聴、信頼。そこから正確な判断を出せ」






 しとしとと建屋の縁から水が滴る。

ここから漏れ出る光をほんの少し受けながら、涙のように落ちていく。




「難しいんじゃね?」




カイルが部屋を出る間際、レックスが苦笑して言う。




「そうさ、難しい」




カイルは手にしていた照明を見せると、マージェスが口をあんぐりさせた。




「守るってのは、大人すら難しい……

だから、いつも真剣に想い、考えるんだ。

さあ、さっさと出てこい。灯がある内に」




照明を揺らすカイルを見た四人は顔を見合わせると、重い足取りで出ていく。

今は優しく笑って立っている彼に、最後尾になるジェドは何かを胸に留めた。

そして、皆から間隔を空けてやっと出て行く。




 雨が体を打ち付ける中、手にする例の灯を頼りに浜を歩いた。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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