表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第四話 決心 
38/133

(7)




 「魔女は俺達に用があんだ!

だったらこっちから出向いて、全部片付けてやるって言ってんだ!

四人で散々調べて、グリフィンを見つけて……

西がおっかねぇって思わなくなるかもしれない、やっと掴んだチャンスだぞ!?

だのに大人しくしてろ!?

冗談じゃねぇ!行かせてくれよ!」




息が荒くなるジェドに未だカイルは黙ったままだが、戸口から身を離して彼と向き合う。




「そうかいそうかい」




レックスが肩を竦めて軽く宥めるも、その態度が余計にジェドを逆撫でする。

ジェドは矛先をレックスに変えた。

大切な事に気付くよりも、説得してみせるという意地が勝る。




「さっさと撃て」




ジェドは目を見開き、僅かに動揺しながらカイルに先端を戻す。

片足があとずさった。




「下ろせジェド」




ビクターの声にも未だ耳を貸さず、再び構え直す。

カイルは溜め息を吐くと、真っ直ぐ接近し始めた。




「来んなよ!」




レックスは片手を腰に当てて見守っていた。




 四人は近付くカイルが怖くてみるみる引き下がっていく。

カイルはジェドからあっさり武器を取り上げ、頭頂部に拳を振り下ろした。

打たれた釘の如く床に落ちたジェドを、皆は見下ろす。

簡単に取り上げられた事に呆然としてしまった。

レックスはというと、必死に笑いを堪えている。




「それで守れるのか」




しかしその言葉は、拳の痛みを超えた。






 荒々しい声で占めていた部屋が静まり返る。

雨音と、縫うように混じって聞こえる波の音。

火のように揺れない人工の青白い灯。

そこに真っ直ぐ立ちながら、優しくも確かに鋭い目を向けるカイル。

ジェドは俯いたまま、何も言わなくなった。

ビクターも、横で縮み上がるフィオとシェナも、何も言えなかった。




 ただ黙りを貫いている内に、別の慌ただしい音が流れ込む。

同時に声までし始めると、駆け足の音が大きく押し寄せた。

グレンとマージェスだ。




 御覧の通りと手を差し出すレックスを見て、彼らは状況に唖然とする。

散らばる武器に、カイルが手にするクロスボウ。

彼が四人と向き合う光景を目にするなり、二人は肩を大きく落とした。




 マージェスは顔を険しくさせながら中に入ろうとしたが、レックスが遮る。

彼は微笑を浮かべながら、カイルに任せろと無言で告げた。




 カイルは、すっかり小さくなってしまったジェドの前にしゃがむ。




「俺が魔女だったら、さっきのはどうだ。

やって退けられたか」









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ