(5)
「すっげぇ!誰か使ってんの見た?」
ビクターの問いかけに、三人は揃って首を横に振る。
「接近戦はダメね。
魔女に近付くだなんてできないわ」
「じゃあライフルは要るな」
ジェドは軽々とそれをフィオに突き出した。
彼女は何も考えずに受け取ると、想像以上に重く、落としてしまう。
「バカ、気をつけろ!」
大きな落下音を聞きつけるなり、ビクターが怒鳴る。
「こんなの持てないわ!」
フィオはシェナと共にそれを抱え、傍の棚に置いた。
彼女は、自分は使えそうもないと膨れ面をする。
「ジェットスキーは?」
ジェドの質問にビクターが止まる。
「どうやって持ってくんだよ。
それごと海に潜るってか?」
「ウエイト積みまくったら?」
ビクターは、無謀な策を真剣に提案するジェドを笑った。
一方、ビクターは手にした鉄製の弓矢の照準器を覗く。
これを使うには矢が要ると気付くと、更にそこら中を漁る。
「ねぇねぇ、空島の竜の精霊って、一緒に戦ってもらえなかったのはどうして?」
シェナの問に皆は考える。
ジェドは、グリフィンが魔女に立ち向かうところ、その精霊に阻止された話を思い出す。
「大人のグリフィンが止められたのに、あたし達が行ったらどうなるの?」
「グリフィンと一緒にすんなって叩いてやるさ」
背を向けたまま答えたビクターが、細長い黒い棒を見つけた。
鉄製の弓に合う物だろうかと、座って仕組みを調べる。
「そもそもだ。
助けてやるってグリフィンが言ってんのに、止めるのはバカだ」
ジェドがビクターから目を逸らし、竜の精霊とやらに呆れながら言う。
「協力できたら、きっともっと違ったでしょうね」
フィオは、床に刃物が纏まった木箱を置き、一本一本状態を見ていく。
シェナはそれを覗き込むと、続けた。
「その精霊にも力があるなら、仲良くなって協力すれば、魔女を捕まえられる?」
どうだろうかとフィオは首を傾るだけだった。
箱を漁る内に、普段持つナイフよりも長い物を見つける。
刃渡り二十センチは超えていそうだ。
「着いたらとりあえずその精霊を見つけねぇ?」
ジェドは手にしていたライフルの装弾方法を調べながら言う。
「だな。まずはそいつと話しをする。
色々教えてもらわねぇと、戦いにくい」
ビクターが照準器を覗いて構えた。
矢の仕込みが完了したといったところか、先端が鋭く光る。
「また怒ってこないかしら」
フィオが手にしていた刃物を下ろして呟いた。
「なら放っとくさ。俺らの島がかかってんだ。
阻止される筋合いは無い」
グリフィンが言っていた事が本当に起きてしまえば、命はない。
ジェドの言葉に、フィオとシェナは小さく頷く。
そこへビクターが三人を立たせ、鉄の弓矢を持たせた。
ライフルよりも軽く感じたが、やはり扱いにくい。
「連射しねぇの?」
「さぁな。試し打ちは今はできない」
ジェドが徐々に発射口を上向きにしてしまうところ、ビクターが下ろしながら言う。
そのまま、矢の設置方法を教えた。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




