(4)
「生かしててどうすんだよ。
空島も俺らも困るだろ」
フィオも信じられない事を言うものだと、ジェドがシェナの頭上から言う。
その時、ビクターの背中に激しくぶつかった。
急に止まるなと言いかけたが、目的地に着いたのかと覗き込む。
武器や、緊急時に備えている多くの品物が揃う部屋。
大人の秘密基地のようなところだ。
「武器の使い方分かるの?」
シェナが少々声を上げ、先頭のビクターに問う。
「使ってみればいい」
彼は悪戯に笑うと、慎重に取っ手を握る。
ドアが長い軋み音を上げると、その先には更に暗い空間が広がった。
「何も見えないわ」
フィオが呟いた途端、青白い光が皆を照らす。
何とビクターは、西に持ち出していたあの照明を、小さな木箱から取り出した。
長老に叱られながらも、ちゃんとポケットに大事に隠し持っていた。
「まだ取ってたのかよ!?」
「ちーがーう、朝のやつ」
シェナのジェットスキーに乗っかったままだったところ、グリフィンが運ばれる際にしっかり回収しておいた。
「すごーい!まだ光ってるの!?」
「一生光ってるかもな」
ビクターは不思議そうに照明を見回してから、部屋の中を照らした。
先に突き進むジェドとビクターは、クールで輝かしいライフルにすっかり魅了される。
よく知っているものとは言え、いつ、何度見ても飽きないものだ。
「お前、殺す気満々か?魔女」
ビクターが適当な位置に照明を置くと、箱や引き出しを漁りながら訊ねた。
「何で?悪い奴じゃん」
「あくまで最終手段だ。
まずは生きたまま捕らえる」
小さな赤い箱を見つけ、僅かにスライドすると銃弾を確認した。
ビクターはあっさりポケットに仕舞う。
「それがいいわ。
話しをして解決するのがいいってアリーが言ってた」
フィオはシェナと手を繋いだまま、そこら中を漁る二人を眺めている。
ジェドはそれに呆れ、漁る手が自然と止まる。
「欲しいものの為なら、グリフィンを海に沈めて俺らを誘き寄せるんだぜ?
話の通じる奴な訳ないだろ」
彼は壁にかかるライフルを見上げ、両手でそっと下ろす。
思った以上に重く、複数は持たない方がいいと判断した。
「壊すなよ」
ビクターがジェドを横目に言う。
彼は銃弾が纏まっていた木箱を戻すと、今度はその横の長い木箱を覗き込む。
被っていた布を剥がすと、何やら弓矢のようなものが露わになった。
鉄でできているかなり珍しいものに興奮する。
「ねぇ、もっと扱いやすい物がいいんじゃない?
海から昇るのに、重いと大変よ」
フィオがそう言って、刃物類が纏まっている箱を見つけた。
シェナも背伸びをして中を覗く。
「あたしもこれくらいのでいいわ」
「やるな。接近戦か」
ビクターが見つけた物を取り出しながら言った。
「せっきんせんって何?」
「近付いて戦うって事。何だそれ!?」
ジェドが解説をする最中、妙なものを取り出すビクターに大きく振り向く。
見れば見るほど、木でできた弓矢とは違って圧倒的に固定感がある。
銃のようにトリガーと照準器があるならば、手で矢を引いて構える必要はないという事か。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




