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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第三話 媒鳥
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(4)




 四人が改めて床に座ると、グリフィンの表情は真剣になる。

長老とアリーは彼の体力を心配する一方、やはりその身に起きた出来事もいち早く聞いておきたかった。

何せ、今でも信じられない状況に身を置き、酷い有様だった筈が逞しい人の姿になっているのだから。




 グリフィンは暫く俯いて考えていたところ、ようやく顔を上げた。




「今から話す事は真実で、緊急事態である事を分かってもらいたい……」




先程とはまるで違う重い声で切り出されると、長老の目が徐々に険しくなる。




「他に同席できる人はいないだろうか……

長くなるし、多くの知恵や意見が必要だ……

助けてほしい……」




言われて直ぐに浮かぶのは漁師達だ。




「呼ぼうか?」




ジェドが中腰になって長老に声をかけた途端、ドアが開いた。

風に乗って、話し声がつらつらと入ってくる。






 「蒸留を考えた奴は天才だがな、新時代の第一蒸留家は俺だ」



「そら結構だがな、何の保証もできんそいつを客人に出すのは止せ」



「腹を下す保証なら俺がしてやるよ」



「待ておい、冗談だろう!?

さっき飲んじまったじゃねぇか!」




グレンとマージェスが笑って現れる後から、レックスとカイルも見えた。

変わり果てた世界で酒が生まれるのは、どうもまだ先のようだ。




 騒ぎも束の間。

彼らはグリフィンを目にするなり急に足を止める。

一体どこの誰だと顔を見合わせた。




「もう聞こえたのか」




長老の言葉に疑問を浮かべる彼らの手を、シェナが颯爽と取りに向かう。

そして、グリフィンの元に導いた。




「……まさか、同一人物か?」




カイルは驚きながらグリフィンの手を取る。




「西には術師がいたってのか?

イリュージョンとは言え、さすがにやり過ぎだぜ?」




ざっくばらんなレックスもまた、カイルに続いた。

グリフィンは、呆気に取られているグレンに手を差し出す。

これが本当にあの白い化け物かと言いた気な顔で、恐る恐る握手をする。

その後、マージェスがにこやかに続いた。






 朧月が雲に覆われた。

島の頼りない灯が、どんよりとした寂寥を押し退けるように浮かぶ。




 グリフィンの信じ難い話は、長く続いた。

夜が更けても、皆は眠気もよそに釘付けになっている。

誰も間に口出しをしなければ、立ち去る事もなかった。

しかし顔を歪めずにはいられない。




 語られたのは、グリフィンがとうとう死んだと思った矢先に見た別世界の存在。

突如として海面に映し出されたそこに手を伸ばした途端、体が引き寄せられた。

浮上するごとに全身が金に発光し、抗えぬ速さで天に上昇した。

その感覚は、今でも肉体に刻まれている。

激しく吸い寄せられて辿り着いたそこは、竜の精霊が守り神として存在する空島と呼ばれる世界だ。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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