(1)
章タイトル: ばいちょう と読みますが
おとり(囮)と意味されるものになっています
フィオが長老の膝元から本を取ると、グリフィンと名乗る彼に突き出した。
「これ!あなたが作ったの!?
どうやって!?これは何でできてるの!?」
わくわくしてならず、目覚めたばかりの彼は質問攻めに合う。
「何であの時ふにゃふにゃだったの?
もっと小さかったでしょ?」
「あんた人を驚かせすぎだぜ…
助けてって言えなかったのか?」
「おっちゃん、幽霊じゃねぇの?」
口々に問い質す様子を見たグリフィンは情報の処理が追い付かず、つい、4人を見て固まってしまった。
「やめなさい」
アリーが白湯を持ってくると、彼等を黙らせた。
「患者さんに向かって何なの」
彼女は呆れたと言わんばかりに溜め息を吐くと、手にしていたカップを静かにグリフィンに差し出す。
彼はそれにも驚いて肩が跳ねてしまったが、小さく礼を言いながら受け取った。
どれくらい振りだろうか。
温かい飲み物が全身に、それこそ手足の先にまで満遍なく染み渡るのを、じっくりと感じた。
ずっと暗い海底に閉じ込められていた。
未だにこの状況が信じられず、これを飲み終えて目を開けば、またあの船内にいるのではないかと怖くなる。
今でも鮮明に記憶している出来事を振り返っては、思う。
何故、どうして彼等は自分を発見できたのだろう。
「すまんが、勘弁してやってくれ」
束の間の静寂が生じていたところを、長老が切り出した。
その声にグリフィンも、改めて彼等との時間が流れる世界に返る。
息遣いや温度が、触れなくとも感じ取れる。
自分は、元の壊れ果てた世界にまた戻って来たのだと実感した。
長老はじっと彼と目を合わせた後、端の4人に視線を向け始める。
「この島一、潔い子達でのう……君を連れてきたのは、彼等だ……」
グリフィンは4人と顔を合わせる。
其々の背丈が段違いになっており、容姿からして好奇心の塊だ。
顔や腕に傷跡が点々とあり、元気なのだが大方、やんちゃな部分が玉に瑕といったところか。
しかし、どこか癒される彼等の姿に少し緊張が解ける。
こんな子ども達は自分の島にいなかった。
目指そうとしていた東の近くで生きていたとはいえ、離れており、接点もそう無かった。
思い出す最中、彼の目がジェドに止まる。
「君だな?大した操縦だ」
優しい声で言われた事に、ジェドは緊張して口を固く閉じてしまう。
面白い子だと、グリフィンは心で笑った。
彼とは最も長く過ごしたと記憶している。
変わり果てた自分の体を運ぶのに、それはそれは苦労をかけた。
少々言葉遣いが気になるところだが、そこもまた、可愛いものだろうと受け入れてしまえる。
乱暴だが、優しさがある。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




