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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第二話 唸声
19/133

(14)




 ジェドはシェナに、自分の潜水道具を託した。

そして腰に残っていたロープを解き、今度はその男性と自分を繋ぐ。

彼を強く縛っては、皮膚に減り込み、あっと言う間に砕けそうで怖かった。




 その時



「ジェド!」




フィオの叫び声と共に、魚がジェドの頭上を目掛けて跳ねてきた。

咄嗟に屈み、彼は間一髪衝突を回避できた。




 現れたのは、視点の定まらない、白目をギョロギョロとさせた(サメ)だ。

と言っても50cm程度のもので、発光鮫と呼ばれている。

それは岩に激突し、そのまま海に落下した。




「出せ!追ってくるぞ!」




ビクターが吠える。

4台分のエンジンが鳴り響くと、先頭のビクターがジェドの真横に引き返してきた。




「フィオとシェナは先に行け!

着いたら皆に報せろ!」




彼等の返事は、ビクターのエンジン音に搔き消される。




「お前はそいつに集中しろ」




ジェドは、言われるがままジェットスキーを走らせた時、再び同種の鮫が海面から暴れて口を突き出してきた。

今にも喰らいつこうと、海中に蠢いているではないか。






 ジェドは咄嗟の判断で槍を抜き、一突き、鮫に負わせてやる。

顔を突き刺されたそれは石ころのように沈んだが、次から次と仲間が喰ってかかる。




 相手にし続ける訳にはいかないと、彼は速度を上げ、島に向かった。

ビクターがその後を追いながら、海面に不揃いの歯を突き立てて暴れる鮫の群を大胆に轢いていく。






 失われた西の島の跡地であるここ一帯は、奇形の魚が多く生息するようになった。

砂に身を顰め、毒を放つものもいる事から、潜水中に直接地面に触れる事は決してしない。

先程の鮫は、この辺りで最も多く発生する。

常に腹を空かせているのか、物の気配や音を感知すると現れやすい。

そして、大抵は群れている。

噛み付かれたら、引き離す事はそう容易くはない。




 ジェドはふと背後を振り返る。

ビクターが向かってきているのは分かるが、距離が開き過ぎて心配だ。

また、体勢を少し変えた影響で、ジェットスキーの速度が落ちた。

その時、ハンドルの辺りが小刻みに揺れ、驚きながらバランスを整える。

すると、前に縮こまる男性の意識が先程より戻っており、背筋を伸ばして前に手をかけ、前傾になりかけていた。




「おいおいおいおいおい!」




ジェドは透かさず、彼を軽々頭から掴んで足元へ押し込んだ。

ふにゃっとしている。

異様な感覚を気にする間も無く、彼は両足で挟んでやった。




「ひっくり返るだろ!じっとしてろ!」




小さく収まった男性は、またしても一点を凝視している。

そして




「………どこ…だ…」




喋った。

ジェドは耳を疑い、速度を落として耳を澄ませた。

だが




「馬鹿ジェド!走れ!」




遠くにいたビクターが、あっと言う間に追い越していく。

彼の後方には鮫の大群が尾を引いていた。こうしてはいられない。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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