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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第二話 唸声
18/133

(13)




 5人は海面に飛び出した。




ジェドはロープで繋がるシェナを引き寄せる。

彼女の無事を確認すると、岩場へ先に上れと指示し、ロープを切らせた。

彼は救出した男性を抱え直し、自分のジェットスキーまで連れて泳いだ。




 ジェドは、救出した彼の冷たさと見た目に肌が粟立つ。

それに、骨が入っていないのかと思う程、体に固定感が無い。

お陰で共に泳ぐのに不安定で、つい舌打ちをした。




「おいおっさん!しっかりしろ!」




これではまるで、島にいる自分よりも小さな子ども達を相手にしているようだ。

何ならまだ、彼等の方が上手く泳ぐだろう。






 ジェドは何とか岩場まで辿り着くと、男性を再び脇の下から抱え直し、引き上げた。

しかし首が座っておらず、彼の顔は大きく着水した。

不安定過ぎる状態に苛立つジェドだが、もうどうでもいいだろうと諦める。

そもそも海中で酸素も無しにいた、化け物なのだから。






 ビクターが大きく息を吸いながら、仰向けになって海月(クラゲ)の如く泳いでいた。

フィオが彼をロープで引きながら、拾ったものに大口を開けて咥え、片腕で水中を搔いていた。






 ジェットスキーに到着したシェナが、後方から来る2人を見る。

ビクターが力尽きている姿に仰天したが、すぐさまジェドに呼ばれた。




「引き上げてくれ!」




ふにゃふにゃの男性に苦労するジェドの元へ、岩を伝って回る。




「何なのこの人!」




ジェドはシェナに彼を支えるよう託すと、息を整えようと岩を掴んでじっとした。




 「ありがとうジェド」




背後から、追い付いたフィオが声を掛け、咥えていた物を手にして見せた。




「何だそれ」



「拾ったの。早く見よう!」




疲れ知らずの彼女にジェドは呆れる。

こちらは妙な物を運んで、息切れしていると言うのに。

やがて、自分の真横に仰向けになったビクターが、フィオにロープで引き寄せられて到着した。




「死ぬかと思ったぜ……」




岩にコツンと頭頂部をぶつけても、彼は何ともない様子でしばらく浮かんでいた。






 「何?この人イソギンチャク(シーアネモネ)なの?」




フィオの声が岩の上から聞こえてくる。

シェナと力を合わせて肩から支えると、そのまま岩に沿って横移動し、ジェドのジェットスキーに乗せた。




 ハンドルと座席の空間に、やや押し込むように扱われる男性に、ジェドは笑いが込み上げる。

その笑い声にビクターが(ようや)く体勢を変え、様子を窺った。




「気持ち悪ぃやつ。

途中で変わってやんねぇからな」




ビクターはそう言って軽快に泳ぎ、ジェットスキーに向かった。






 其々が移動の体勢を整えていく。

ジェドは、自分の股部分に収められている、明らかに大人であろう子どものような彼を改めて、気味悪く観察した。

小さく丸まり、細く息をしている。

薄い皮膚越しに骨出っ張り、強調されていた。

顔や体には点々と傷を負い、体が小さいとはいえ重量はある。

来る時よりも速度は出せないし、出さない方がいいだろう。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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