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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第二話 唸声
16/133

(11)




「ええー!」




シェナが叫ぶ横で、ジェドが気乗りしないままよそに向いた。

フィオは、一度だけだとジェドの腕を掴んで頼み込む。

そこへ、ビクターがジェドを呼んだ。




「叩き割るのはお前と俺。

多分、あと数か所刺して蹴りゃあいい」



「で、どーすんだよその後」




彼は未だ皆に目を合わせようとしない。




「私が中に入って引っ張り出す。

窓の広さを見てもその方がいい」




ジェドが小さく唸ると、それで、と更に策を求める。

静まっていた風が再び吹き始めると、四人はだんだんジェットスキーから遠ざかっていく。




「状況によっては俺も中に入って引き出す。

お前は海面まで引っ張れ」




ビクターの指示に、ジェドは深々と溜め息を吐いた。

どう考えても良い気がしない。




「頼む。行くぞ、嵐になる前に」



「おい」




淡々と実行しようとするビクターを、ジェドがようやく引き留める。

濡れた黒い短髪が、強風に煽られて細かいしぶきを散らしていた。




「……引き上げたら、俺が前にそいつ積む」




フィオはふと緊張が解け、笑みを浮かべた。




「頼んだ」




ビクターはレギュレーターを咥え、颯爽と海中に消えた。




「ちょっとー!」




フィオがシェナの手を掴むと、そのまま彼女の口にレギュレーターを突っ込んだ。






 照明は、海中でシェナに預けられた。

ビクターを先頭に連なって泳いですぐ、沈船に再び到着した。

あの化け物は窓から姿を消している。

また現れるであろう青白い顔を思い出すと、皆は胸騒ぎがした。




 作戦通り、ビクターとジェドが配置についた。

手早くナイフを掴むと、窓枠に刺し込んでいく。

ミシミシと、先程よりも大きく派手な音が立ち続けた。




 フィオはそれぞれが繋がるロープを解くと、シェナとジェド、自身とビクターに別れるように繋ぎ直す。




 窓枠がほぼ外れ、いよいよ窓を乱暴に叩くのだが、ビクターは手を止めると槍に持ち替えた。

それを思い切り窓の上の船体に突き刺して支えにし、そのまま窓を両足で蹴るが、壊れない。

ジェドがそれを見てじっと考えていると、船室の奥で白い何かが動き、肩がつい跳ね上がる。




(……いる)




気持ち悪い事この上ないが、彼は気持ちを整えるべく一度目を閉じた。

その後、槍を杖にして浮上すると、船内と窓に若干開いた隙間に槍を大きく刺し込む。

そのまま槍を手前に引くと、剥離音を立て始めた。

大人から聞いた事がある、テコの原理というやつか。

ビクターは思い出すとすぐさま浮上し、ジェドの真似をする。




 フィオとシェナも、彼らに釣られて浮上していた。

フィオはそこで、シェナを安心させようと手を繋いでいる。

そのままじっと船内を見ていると、白い物陰が現れた途端――




「っ!?」




化け物は、窓に勢いよく張り付くと四人に驚き目を剥いた。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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