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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第二話 唸声
15/133

(10)




 肘や拳を使って窓を叩き続けていたその時――

窓から青白い顔をした人間が、口を半ば開いた状態で現れた。

堪らず悲鳴を上げた四人は、咥えていたレギュレーターが外れる。

大量の気泡が放出され、浮遊するように群ていた魚が一目散に消えた。

ビクターとジェドは慌てて船を蹴り、海上に逃げる。

必死に泳ぐ四人の息は、もうじき尽きそうだった。




 皆は外に激しく顔を突き出すと、海水を吐き出す。

ピリピリとした塩味が喉を刺激し、咳込む最中、荒波が邪魔をした。




「何だよあれ!」



「帰ろうよー!」




ジェドが叫ぶ隣でシェナが泣いている。

一方ビクターは、静かに見たものを思い出している。

船室に出没した青白いあれは




「……人だったわ」




フィオは恐怖の声で呟く。

彼女は、一瞬で記憶した事を皆に話した。

茶色い髭を生やした人間で間違いなく、男性だという事を。




「人……ああ、人だったな。

人だったけどありゃ人じゃねぇだろ」




冗談も大概にしてもらいたいと、ジェドは空笑いする。




「ついに幽霊に遭遇しちまったか。

乗り移ってなきゃいいけど」




ビクターが息を整えながら言うと




「帰ろう!」




シェナがフィオにしがみ付き、皆に懇願する。




「ほら、風も静か!今なら移動しやすいって!」




風は温かかった。

波こそまだ立つが、来た時に比べて小雨にもなっている。

然程時間は経過していないというのに、妙な天候の変化に戸惑うばかりだが




「なら助けよう!」



「!?」




皆はフィオの提案に戸惑う。




「帰ろうって言ってるの!」




シェナがフィオに怒鳴った。

その時、強い温風が吹きつけ、四人が少し流される。






 少し離れた先で、ジェットスキーがなんとか無事に岩の横で浮かんでいるのが見えた。

沈船までそう遠くなかった事になる。

だとするとやはり、あの沈船や幽霊が気がかりだ。




「人よ?置いて帰るの?」



「バケモンだろ……」




ビクターが足元を気にしながら言う。

追って来ていないかと半ば怯えていた。

ジェドと派手な物音を立てた事で、(サメ)に気付かれていないかも心配になっている。




「窓が外れそうになってた!あと一息よ!

私も手伝う!」



「あんなもん連れ出してどうすんだよ!」




ジェドが慌てふためいても、幽霊を気の毒に思うフィオは引かない。

彼女はナイフを取り出し、腰のロープを探り始めたが――

ビクターがその手を止めた。




「分かった」



「は!?」



「連れて帰れないよ!」




二人はビクターに猛反対の意を見せるが、彼はフィオにナイフを仕舞うよう促す。




「いいか、酸素がない。この一潜り切りだ。

成功しなかったら諦める。約束だ」









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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