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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第二話 唸声
14/133

(9)




挿絵(By みてみん)




ビクターは持っていた照明を先に伸ばす。

沈船なのだろうが、近付くまではどういったものかは分からない。

フィオが目配せすると、ジェドとビクターが並んで先頭を泳ぎ始めた。

ロープに引かれながら、フィオがシェナの手を掴んで進む。






 少し前進しただけで影は明確になった。

東の漁船よりは小さいが、同じく複数人が乗船できるであろう船が沈んでいる。




 限られた時間で探索をせねばならないが、そんな事も忘れて皆はしばらく圧倒されていた。

殆ど怖いもの知らずの彼らは、これを持ち帰りたい衝動に抗うのに必死だ。




 黒く腐食した木材が地面にめり込み、沈船はあたかもずっとここにあったような容姿だ。

海藻や貝類もかなり付着している光景に、皆は目を疑う。

大人達も何度かここに足を運んでいるが、どうしてこれが見からなかったのだろう。

不思議でならないまま、触れられるところまで接近する。




 時々小さな黒い魚が視界を過った。

皆は、船の麓から船体、柱に目を這わせていく。

見張り台と思しき木材が折れた様子が分かる。

そのまま慎重に、轟々と波と雨の音が入り混じる中を移動していくと




「う……うう……」



(!?)




シェナが飛び上がるように船を蹴り、後方に大きく下がった。

連なる三人がそれに引っ張られ、船との間に距離ができる。






 ビクターとジェドが地面に槍を刺し、体を固定しては唸り声がした方に目を剥く。

フィオはシェナを引き寄せ、身を縮めた。

今にも口から心臓が出そうになるところ、沈船を観察し続ける。

そこへ




(あそこ!)




フィオが素早く指差した先にあるのは、船室の窓だ。




「うううっ……」




そこから明確に聞こえてくるのは、誰かの唸り声に違いない。

しかしここは海中だ。

ジェドは首を傾げ、窓に接近し始める。

シェナが激しく首を横に振ると、口から大きな気泡が溢れ出た。

フィオは慌てて彼女の動きを止める。




 ジェドに引き寄せられるがまま、皆は窓までやって来た。

彼は窓枠に指を掛けて覗くが、暗くて何も見えない。

その時、隣で何かが光った。

見るとビクターがナイフを抜き、どくように指示してくる。

ジェドは窓枠に指を掛けたまま少し引き下がると、その背後からシェナとフィオが目だけで覗き込む。




 ビクターは上の窓枠を数回突き刺した。

先端が簡単にめり込んだ様子から、腐敗がかなり進んでいる。

窓が外れるかもしれないと察すると、そのままジェドに首で窓を示し、彼が指先を掛ける窓枠を軽く叩く。

理解したジェドはナイフを抜いた。




 ビクターは持っていた照明をフィオに預け、今度は先程よりもナイフを深く窓枠に刺し続ける。

辺りに激しい音が響き始めた。

力を込めて作業する二人を、シェナとフィオは警戒しながら見守った。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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