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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
最終話 定め 
130/133

(6)




※本章の締めに伴い

 約1400字でお送りします







 「……?」




どこから着地したのだろう。

延々と同じ夢を見続けていた。

足場のない真っ暗な闇で、ただひたすら、苦しみながら繰り返し見ていた。

どこだか分からない空間で、何度も何度も、目に見えない対象に声を上げていた記憶が肉体に刻まれている。

助けたい、そしてまた、途中で感じ取った勇ましいものを、無い力を振り絞って後押ししていたような気がする。




 周囲からは、感動に震える声が波の如く立った。

彼は徐々に立ち上がり、体を舐め回すように眺めてから顔を上げる。

目と鼻の先にいるのは、あの時とは比較にならないほどに美しい




「リヴィア……」




彼女は灯していた青い目を静かに閉じると、俯きながら微笑んだ。

少々恥じる姿を、彼は黙ったまま安堵の目で見つめる。




 「グリフィン!」




その声に振り返や否や四人が激しく飛びつき、歓声が上がった。

言葉を発する間もなく、感激の渦に埋もれていく。




 その姿を暫し見届けてから、リヴィアは宙で備える従者達に向き、無言で頷いた。

空島の仲間達が共に高々と上昇すると、着水していた守護神の竜が翼をいっぱいに広げる。

それが何を意味するかを悟った時、四人は表情を一変させ、慌ててリヴィアに縋りついた。




「また会える!?」




シェナの第一声に、彼女の表情は硬くなる。




「会えるだろ? もう仲間だ」




ビクターの真っ直ぐな瞳に、少しばかり口が綻ぶ。




「今度はもっと歌ってるとこ見せろよ」




ジェドの声に、リヴィアは目を丸くさせた。




「だってあんま歌ってなかったじゃねぇか。

あんなすげぇ声なのに」



「そうよ! とっても綺麗だったわ!」




フィオが彼女の白い手を取ってはしゃぐ。

しかし、その手が柔らかく解かれると、リヴィアは踵を返した。




「……嫌いだ」




低く寂し気な声に、辺りは静まり返る。




 周囲が表情を曇らせると、リヴィアは少し浮かんでから皆を振り向き、見下ろした。




「歌は嫌いだ……」




ジェドはポカンと口を開けたまま、意味が分からず眉を寄せ、あれこれと考え始める。

あんなに素晴らしい力を持ちながら、何故そのような事を言うのか。






 その様子を面白がる小さな笑い声は、宙にふわりと舞うようだ。

そしてリヴィアは、再び人々と四人を見つめる。




「ありがとう……だが、もう来るな……」




言い終わりに、シェナの顔を見た。

シェナは大きな目を震わせながら静かに首を横に振り、リヴィアを掴もうと前に駆け出す。

だがそれを、グリフィンが咄嗟に止めた。

腹から抱えるように、優しく。

そのまま彼は、小さく震える背中に手を添えると、リヴィアを見上げる。




「君はこの先も……見てるか……?」




風に靡く白銀の髪の中に潜む俯いた憂い顔がふと上がると、彼に、四人に、そして人々に、一つ大きく頷いた。

そして一帯を見渡した時、青の眼光を滲ませていく。




「この地球は命と共に廻り、再び新たな姿を織りなす……」




更に上昇した彼女に、四人の手が伸びかけて止まる。




「正しい判断の元、その身に宿る力を発揮する事に務め……生きなさい……」




突如、背後から射し込む陽光が彼女を影に変えゆき、表情を閉ざしていく。




「命ある限り、この地球は語り継がれ、不死の伝説となろう……守り、守られながら、永遠に……」






 刹那、波が高く上がると竜達が急上昇した。

しぶきは輝きの雨に代わり、人々の目を覆い尽くす。

突風が吹き荒れ、砂が舞い、この場に射し込む神秘的な強い陽光が徐々に弱まる時、皆はようやく空を仰ぐ。 




 そこには、人々を導く太陽と共に、青き大空が限りなく広がっていた。




挿絵(By みてみん)









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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