(8)
西は常に曇天で、晴れていても鳥さえ全く確認できない。
いつか、海底に沈められた多くの魂が、まだどこかに眠っているのだろうか。
遺品と思われるものもまだ発見される現在、遺された声が浮上しているのだろうか。
そんな、様々な想像を巡らせる四人だった。
彼らは海面に顔を浸けて近辺を確認するが、この天気で透明度が高い筈もない。
ビクターは武器ベルトの道具入れから何かを引っ張りだした。
そして肩のロープを自分の腰に縛ると、隣のシェナの腰に繋ぎ、そのまま彼女に残りのロープを手渡した。
「全員縛れ」
フィオとジェドがシェナに集まると、互いに協力して腰にロープを括りつける。
その間、ビクターは照明の準備をした。
金属と酸素と水分の化学反応で光を放つこれも、貴重な品物だ。
潜水時の暗がりを照らす時や、火が途絶えた時などの緊急時にしか使わないとされるが、悪戯な彼は平気でそれを取ってくる。
掌に収まる長方形をしたプラスチックに、同素材の蓋がされている。
濡れた手で外した事で、一瞬触にして青白い光が放たれた。
ビクターはそれを目の細かい籠に入れる。
横の皆はそれに目を輝かせていた。
「さすがに一個だけな」
彼はそう言うと、ロープで皆が繋がったどうかを確認する。
皆はレギュレーターを咥え直し、いよいよ潜水した。
雨脚は強まっており、海面を叩きつけている。
いつもより波が高くとも、すっかり慣れてしまっていた。
体を揺さぶられながら、ぐんぐん潜っていく。
【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】
真っ暗な海中に、ぼんやりと例の光が柔らかく浮かぶ。
流れが普段より強いと判断したビクターは、腰から槍を抜くと最長に伸ばした。
それを見た三人も同様に手にすると、岩や地面にそれを突き刺しながら慎重に前進する。
ビクターが先頭で灯す光に、ふわふわと揺れる海藻が照らされた。
天候を省けばここまでは普段通りだ。
しかし通い詰めている彼らは、その先の異変に目を見張る。
慣れた視界に大きな影が飛び込んだ。
皆は水流に自然と纏められ、互いに引っ付き合いながらも、目線はそこから離れない。
(岩?)
しかし、今まであんなところにあっただろうか。
皆は目を凝らすと、少しずつ輪郭が露わになる。
岩にはない、滑らかな曲面や直立した物体が観測できる。
特徴的で、人工的な凹凸もあるそれは
(船!?)
心の声が一致した。
強い流れに揺さぶられる中、地面に刺した槍を支えに互いに掴み合いながら、暫しそれを眺めた。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します