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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
最終話 定め 
129/133

(5)




 守護神の竜が海を旋回し、岸辺まで来ると翼をはためかせる。

人々は風圧に体が押しつぶされそうになるのを、何とか踏ん張りながら目を伏せる。




 その後、竜が着水すると、遥か遠くからリヴィアが飛行して接近する。

彼女の眩し過ぎる姿といい、現れた竜といい、頭の整理が追いつかない人々は身を竦めてしまう。




 四人がリヴィアを振り返った背後に、先着していた従者達が宙に並んだ。

竜の使者達の姿はどうしたのかと、四人は宙を探し回る。

その時、甲高い騒ぎ声が、点々と並ぶ家の間から聞こえてきた。

小さな子ども達が使者達を面白がり、その足先に飛び付いて引っ張ろうとしている。






 「見て!」




シェナは空を指差した。

林の木々が生い茂り、見た事のない鳥の群が飛んでいる。

それだけでなく、離れた先の岸には流木や、見覚えのある瓦礫までもが大量に引き上げられ、並ぶ家々の竿には複数の布が掛かり、柔らかく靡いた。




 「これは……」




長老がアリーに支えられながらようやく外に出ると、それを捉えたリヴィアが眼光を優しく彼に放った。




 二人はつい目を伏せると、長老の握っていた杖が砂に音もなく倒れる。

長老は薄目を開くと、杖から離れた手を開閉させながらまじまじと見つめた。

足に力が入り、体に真っ直ぐな軸を感じる。

自分の力だけで、地面を踏ん張っている感覚がする。

若かりし頃のそれを噛み締め、ただただ嬉しくなった。




 リヴィアが左手を真横に振ると、従者達が大海原を旋回して遠くに飛翔し、小さくなっていく。




「どこ行くの?」




フィオの声に皆も目で追うところ、リヴィアが着地し、足早にやって来た。

四人の近くにいた人々は、見るからに輝かしい異質の者に驚き、あとずさる。




「手を出して」




霧のようにぼやけた優しい声をする彼女は、どこか楽しそうな微笑みを浮かべていた。

一体何かと、四人は掌をおもむろに差し出す。




 宙を旋回して戻った従者達が、人々の頭上に突如、白砂をふわりと降らせた。




「……何?」



「砂……?」




漁師達や他の島の者達も、何気なく手を広げてそれを見つめ、掌で感触を確かめる。




「握って」




リヴィアに言われるがまま、皆はその手を強く握った次の瞬間――ジリジリと小さな振動を帯びると熱が込み上げ、静電気のような軽い痛みを感じ、手を振り解いてしまった。

何事かと皆が一斉に手を振り払っていると、握っていた砂は生きた糸のように宙を駆け、波打ち際に向かう。

リヴィアはそれを見届けながら眼光を増幅させると、自分が握っていた砂に勢いよく息を吹きかけて飛ばした。




 四人の目の前に突如、旋風が巻き起こる。

皆の掌から解放された砂が螺旋に舞い始めた。

それは徐々に砂山を築き、やがて丸く、時に角ばった立体を仕上げていくと――




「あ……」




ビクターの目が震えた。

そこに現れたのは、四つん這いの姿勢で俯いたグリフィンだった。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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