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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
最終話 定め 
128/133

(4)




挿絵(By みてみん)




 刹那、水平線に白い閃光が走ると、島に向かって一気に迸る。

眩し過ぎて目が眩み、人々は目を大きく伏せた。




 空を覆っていた灰色の厚い雲は、白光を上げる水平線に向かって吸収されるように流れ始める。

みるみる雲が吸い込まれる時、幾つもの陽光が射し始めると同時に高波が勢いよく立ち上がった。

そのしぶきは雨に代わって、煌びやかな光に降り注ぐ。

一変した状況に、誰もが瞼も声も失う。




 その途端、聞いた事もない音が長く轟いた。

低くて太いそれは、生物のものか。

島やその周辺を覆い尽くすように、地面までも揺らす。

人々が海に目を凝らすと、現れたのは空島の従者達と竜の使者達。

そして、巨大な守護神の竜だ。

それぞれが青い眼光を放ちながら島の上空を旋回し、更なる陽光を生み出していく。

戻ってきた温かい空に、人々の悲鳴はあっと言う間に掻き消された。




 しぶきは瞬く星のようで、人々は目も心も奪われていく。

外の事態に長老が寝床から出ると、アリーと共に震えながら釘付けになる。




 荒れ狂う天気が払拭され、竜が放つ鋭い眼光が陽光と共に島を包んだ。

目を覆う最中、傷や苦痛がみるみる拭われていく。

人々は元の健全だった時の感覚を取り戻し、体が軽くなるあまり自然と動いてしまう。

一変する周囲と上空を何度も見渡し、感嘆が止まらない。




 そして高波が再び起こると、しぶきを激しく上げながら水面が盛り上がり始めた。

そのまま岸辺に水のアーチが出来上がると、穴が出現する。

皆が一斉にそこに目を向けると、四人が激しくそこから投げ出されるように飛び出すと、砂浜を雑に転がった。






 ビクターが尾骨に走る痛みを上げる横で、フィオは口に入った砂を必死に吐き出し、咽る。

全身砂まみれに悶えるシェナに、傍にあった岩に派手に頭から激突したジェドが堪らず声を上げた。




 「お……おま……」




レックスが震えながら、海から現れた四人に思わず呟く。

しかしカイルは、未だ幻覚だと疑いマージェスに飛びついた。




「助けてくれ! 死にたくねぇ!」




騒ぐカイルの背中に、グレンが声を失うまま手を置き、信じられない状況に唖然とする。






挿絵(By みてみん)




気温はすっかり上がり、陽光を受けた砂浜は温かくなる。

そこにはもう、空島で見た不思議な光もなければ、すぐに体が乾く事もない。

顔を伝う水は辛い。

鼻腔を擽る海の香りに、一面が真っ青でも透明でもなくなった景色。

緑の林が風に揺れ、岸辺を登った先には、一驚を上げながらこちらを見つめる家族の皆。

互いがどんなに目を擦っても、その存在は消えなかった。




 「帰って来た……」




信じられない。

よろよろと立ち上がる四人の口から漏れた、小さな一言。

目はたちまち潤んでいく。

そんな姿に真っ先に漁師達が飛びつき、抱きしめた。

島中は、感激する声と感涙に満ちていく。




 そこへ、あの太くて低い、守護神の長い咆哮が再び轟いた。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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