(11)
リヴィアは再び目を淡く灯すと、そっと顔を伏せ、背を向けていく。
竜の使者達が即座に飛び立つと、島を広く旋回し始めた。
「ねぇリヴィア」
フィオの声に足を止め、彼女は肩越しに静かに振り返る。
「どうなったの? あれから……」
少し間が空くと、シェナが足早にやって来た。
「あたしの声が上手くいった?」
「は? 何だそれ」
ジェドが目を丸くする。
「だってあの魔女が欲しがる力よ。
元気にしてあげられるんじゃないかと思って、それで飛び降りた」
「嘘だろ……」
ビクターは口をあんぐりさせる。
するとシェナは、真剣な眼差しを向けた。
「だって……それで助かるなら声なんか要らない。
戻ってこないとしてもあたしは、生きていける自信があった……皆がいるから」
その言葉にリヴィアは目を閉じ、口元を綻ばせる。
「互いが持つ力が合わさる事で生まれる新たな力は……欲望のままに操れる……」
四人が振り返ると、リヴィアは空を仰ぎ見た後、再び勇ましい彼らに向いた。
「声の力はあなたの願いを強く含み、我が守護神を呪いから解放し、奮い立たせた……」
「何だまたお前かよ」
ジェドがどこかいじけた態度を見せると、小さな可愛らしい笑い声が聞こえた。
「大丈夫……」
その言葉に最も嬉しそうに反応したフィオは、自信を込めて頷く。
「この言葉はこの先も……あなた達の信念となり、貫くだろう……」
リヴィアは静かに、今にも空気に溶け込みそうな声で続ける。
「その目や、力は必ず、皆を導く……決して恐れるな……」
ビクターはふと、目元に手を当てる。
「力は、正しく使う為にある……あなた達にはそれができる……信じて、前に進みなさい……」
リヴィアは、瞬きも忘れて集中する四人から視線を逸らすと、静かに微笑みんでは踵を返した。
そして、強い眼光を放った途端、従者達が素早く湖に回り込む。
旋回していた竜の使者達が、上空で甲高い咆哮を上げた。
すると、守護神の咆哮が森の向こうから轟き、頭上に翼を激しく広げて現れる。
空には次第に灰色の雲が湧き、陽光はみるみる遮られ始めた。
それは、馴染みのある雷雲を思わせる。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します