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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第九話 再生 
122/133

(10)




「ひでぇ仕打ちだな……」




ビクターが全身の痛みに顔を歪めながら起き上がる。




「助けてやったもんに対してやる事かっ」




ジェドは砂を払いながら、真上をギーギーと戯れる小さな竜の群を睨む。




「でも私達……結局最後どうしたの?」




フィオの声に、皆は静止する。

思い出してみても、荊に縛り上げられてからの記憶がない。

ただ、途中から苦痛が拭われ、心地よく海に浮かぶような感覚がする中、穏やかな夢を見ていた事だけは鮮明だ。






 四人が放り投げられたそこは、空島へ来た時に浮上した湖だった。

圧倒的な変化に、周囲一帯を声もなく見渡してしまう。

光と共に揺れる青い森。

滝の音は、来た時よりも明確に聞き取れる。

まるで何事もなかったかのように、平穏な時が流れていた。




 澄んだ空気を大きく吸い込み、久し振りの安心感を得る。

そしてふと互いの目が合うと、自然と笑い声が込み上げた。

それらは、光る砂浜を軽やかに転がる。

と言っても、未だ不完全なのだが。






 互いに寄り合っていると、湖からの鋭い陽光に思わず手を翳す。

指の隙間から薄目を覗かせると、宙で騒いでいた竜が静まり、浜に降り立った。




 水平線の光が両側から合わさり、一直線線になると、眩さが際立つ水面の上にぼんやりとした影が浮かび上がった。




 四人は翳していた手を下ろし、それに釘付けになる。

気付けば自分達の周りに五人の精霊達がおり、現れた影を迎え入れるように目を青く灯らせた。




 陽光が次第に弱まると、影の輪郭が明確になる。

幾重にも重なるパール色の薄衣を、光を絡ませた白銀の長髪と共に靡かせながら、彼女は、青の眼光越しに無表情で皆を見つめていた。




「リヴィア……」




真の姿に瞼を失い、ただ呟く事しかできなかった。

青く血塗られた岩肌の姿が嘘のようで、背も高く感じる。

彼女の眼光が消えていくと共に、従者達のそれもまた連動する。






 リヴィアは浜に緩やかに降り立つと、四人に歩み寄る。

自分の見違える姿に声を失う様子を、面白がって静かに笑った。

そのとてつもない美麗さに、硬直してしまう。




「まだ終わってない」




リヴィアはそう言って、右手を優しく差し出した。

純白の手は、あの歌の時に見た凄まじい光そのものだ。




「彼女の喉に触れる時、その力は放たれる……ビクター、ジェド、フィオ……」




皆は互いに目を合わせ、三人は緊張しながら手を差し出す。

最後にリヴィアが底から触れ、軽く持ち上げた。

何をするのかと、四人は小さく戸惑いながらリヴィアを見つめる。




 四つの手が重なると、そのままシェナの喉元へ運ばれる。

数秒当てられた後、リヴィアはそっと放した。

何か特別な現象が起こる訳でもなく、未だ緊張の静寂に包まれている。

残る三人の手が、これに戸惑いながら離れた。




 シェナは息を呑む。

真っ直ぐ見つめるリヴィアの表情は、ふと微笑みに変わった。




「……あ」




小さな声が溢れた途端、三人の声が盛大に上がるとシェナに飛びついた。

喜びに満ちた四つの笑い声が、温かい風を突如吹かせては、その場の皆を包み込んでいく。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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