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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第九話 再生 
120/133

(8)




 四人が驚いて身を引くと同時に、足元から煌びやかなしぶきが勢いよく上がる。

精霊はそんな彼らを小さく笑った。

リヴィアにどこか似たその精霊は、顎下までの長さをした灰色の髪を風に靡かせている。




 判別がつかない言葉は、空島の言語か。

優しく囁くように溢れる声に、風が緩やかにそれを乗せて運び、白砂が舞っては宙を光らせる。

滝壺から川を伝い、森の内と外を撫でるように漂う。

陽光は、太さを増していった。




 ビクターは、歌による変化を見届けた後、再び精霊を振り返る。

しかしもう、そこにはぽつんと枝だけが伸びているだけだった。

それでも歌声は残ったまま、その場に響き続けている。




「行こ」




彼の掛け声に、皆は森の中へ駆けた。






挿絵(By みてみん)




 木霊する精霊の歌声は植物に触れて共鳴し、森の中を広々と優雅に擦り抜ける。

乱雑に木々が伸び、通路を遮っていた黒い森が嘘のようだ。

辺りは見通しがよくなり、光り放つ奥の道が四人を自然と導いていく。






 川に沿って流れる精霊の歌声が風に舞い上がると、森の真上で浮遊する別の精霊に渡る。

一束に結い上げられた灰色の髪を揺らしながら、真っ青な森を見下ろし、声を紡いで旋律を吹き込んだ。

茂みはより青さを増し、幹に受ける水面の反射光が強まる。

精霊は、その間を足早に抜ける四人に微笑むと、ふわりと消えた。






 「あそこ!」




フィオが立ち止まり、横道を指差した。

見覚えがあるそこは、竜が連れて来たあの崖だ。

太陽が燦々と照らすそこは、あの時と同じ、濃い靄がかかって向こうが見えない。

靄に滲むしぶきの光の美しさに、暫し目を奪われる。




「塔は、この先にあったわよね?」



「まさか崩れたのか……?」




ジェドは見えなくなったそれに背筋がぞっとする。




 真上から降り注ぐ精霊の声が優しく森の中に落ちて合わさり、二重奏になって辺りを漂い始めた。




 シェナが来た道を引き返し、先へ進みだすと、三人は慌てて後を追う。

地面を踏み込む度に青い光がぼんやりと放たれ、静かに消えていった。 






 森の半分を抜け、木々の合間から湖が見えてくる。

そこで再び立ち止まった。肩までの髪を揺らしながら、白砂の上を歩く精霊がいた。




「リヴィア!」




三人が声を揃えるも、その精霊は振り返る事なく森からの二重層の歌声を紡ぎながら、笑って視界から消える。




「リヴィアじゃないわ……」




皆は不思議に思いながら首を傾げ、その精霊を追いかける。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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