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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第九話 再生 
117/133

(5)




 魔女は、気配もなく再現した竜の精霊達に怯む。

竜の魔力により復活した空の神々は、徐々に眼光を鋭く灯すと威嚇し始めた。

武器の手に力が込められると、構えは更に定まり、攻撃態勢に入る。

見渡せば、黒の呪いに覆われていた空島が、みるみる青い生気を取り戻し始めているではないか。




「貴様っ……!」



「迂闊だったな贋物よ」




女王は全身から煌々と青白い光を放ちながら魔女を見据えると、脇腹に手を入れる。

抜き出された銀の光が這う斧は、雲から射す陽光を鋭く反射させた。

しかし魔女は口角を上げ、狂気に満ちた目で女王を睨みつける。




「これは我らのものだ!

歪なこの人間共で今度こそ、人類を破滅に追い込んでやる!

貴様らのような邪魔者も含め、全てなぁ!」




陽光はみるみる太くなり、その場に柔らかく射し込むと、魔女の肌を焼いていく。

全身から細い白煙を上げる姿は、いつまでも焦燥感に溢れる表情で怒り狂う。




「お前は欲に駆られ過ぎた……もう眠れ……」




女王は暫し魔女を見据えた後、小さく従者に頷く。

従者全員が、武器を片手に魔女を押さえ付けた。




 空にかかる厚い灰色の雲は、滞る事のない強い風に払拭されていく。




 失神した四人を縛り上げる荊が地面に戻る傍ら、陽光に炙られる魔女の呻き声は止まらない。

女王は眼光を柔らかく灯すと、縛られた四人を見た。

そこへ突如、四頭の小柄な竜の使者が宙を旋回して着地し、四人の荊を噛み砕いていく。




 押さえ付けられた魔女の前に女王が着地した。

魔女は従者達に武器を向けられ、押さえ込まれる中、ありったけの憎しみを込めて睨め上げている。

その時、魔女の眼光が赤に灯ると、全身が淡い紫の光で象られた。

そこへ、これまで耳にした事のない低い嘲笑に、竜の精霊達が焦りを見せる。

魔女ではない者の声に素早く警戒した。

女王は目を尖らせ、手にする斧の刃を魔女の首元へ突き付ける。




「貴様も惨たらしいもんだな……」




地面に押し付けられるまま、声の者は切り出した。




「欲の為ならば血の争いを起こし、命までも絶つ……地球の為、未来の為とほざきながら、人間は……

それでいて滑稽な出来に嫌気が差す……愚鈍でつまらん……故に、派手に、徹底的に我が呪いを投じてやったというのに、あの忌々しい黒の陽炎は抑制しよってっ……!」




一体全体この者はどこから喋っているのかと、精霊達は戸惑いを隠せない。

その者の上体が僅かに上がると、赤の眼光を強めながら苛立ちを浮き立たせた。




「成果は歪んだ!何とも煩わしい!

だが今回ばかりは愉快だ!

この残る混沌共を使い、その機会は再び訪れる!」




最後に笑い飛ばす声の者に、女王は憐れみの表情を浮かべる。




「その歪んだ渇望故に惨烈は生まれる一方……」




青い目を半ば閉じ、悲し気に呟くと、斧で魔女の下顎に触れた。

黒い血はそのまま、細く刃を這う。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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― 新着の感想 ―
[良い点] 形容詞が綺麗。一文バランスが良く読み易い。 [気になる点] リヴィア?! リヴィアーーーっ!! [一言] 行かないでリヴィアぁああー!←まだ引き摺ってるw 嵐が去って美しい景色。 抑揚リ…
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