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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第九話 再生 
116/133

(4)




「飽きちまったわ!」




魔女は、接近していたビクターの右腕に回し蹴りを食らわせ、体勢を立て直すと迫りくるフィオの顔を殴り飛ばす。




 四人がすっかり立てなくなると、魔女は一息吐いた。




「……馬鹿馬鹿しい」




手に戻った杖が再び床を叩くと、底から伸びた蔓はとうとう四人の足、胴体、肩へと巻き付いて引き上げ、羽交い絞めにした。

瞬時に棘が生えて荊と化し、鋭い刺激に皆の悲鳴が上がる。




「こりゃあいつか見た光景だねぇ、数が多いと見ものだよ!

見せてやりたいもんだ……何だ……ああ!

バズるだのというやつだろう!」




足元のライフルは無惨に蹴り飛ばされ、湖へ呆気なく消えた。




「愚劣極まりない表現もこの場に置きゃ少しは光るのか……」



「このっ……化け物っ……!」




フィオは肌にめり込む棘に耐えながら声を絞り出す。

しかし魔女は腹を抱え、心底揶揄った。




「このクソ蛇がっ……消えろっ!」




ジェドが憎しみを放つ中、血が肌に細く伝う。




「御託並べてんなっ……!

もうっ……勝負はついっ――」




ビクターの腹から鈍い音がし、発言を絶たれた。




「哀れなクソ餓鬼。だがその執着は嫌いじゃない」




魔女は拳を握りながらじりじりと捻りを加える。

荊の締め付けと太さが増すと四人の苦痛が大きく漏れ、意識がより遠のいていく。

未だ手にしていた武器が力無く滑り落ち、地面に乾いた音を立てた。




「おやおや遂にお空の神様はあんた達を見捨てたかい!」




魔女の鋭利な目は天から、空気を求めて肩を荒く上下させる四人に向く。

そしてもう片方の掌を下向きに開き、ゆっくりと窄めていった。

荊が軋み始めると、拘束をより一層強めて根元を揺らしては、徐々に浮かび始めるではないか。




「折角だ。このまま連れ帰って傑作にしてやるよ!」




自分だけの声に満ちたこの場で、四人に巻き付いたまま浮上し始める荊を前に、高々と哄笑を浴びせたその時――




 「その前に貴様を祓ってやろう」




魔女は目を見開き、焦ると咄嗟に頭上を仰ぐ。






 続く、鋼の音。

五人の従者が、銀の刃、矛先、矢を一斉に向けながら睥睨していた。

群青色の目に純白の肌。

纏う衣は銀と白の光を泳がせる。

時に足元から、銀の装飾の輝きが垣間見えた。

白銀の髪を持つ彼らの容姿は、長髪や短髪、編み込んだ髪や一束に結い上げられた髪と様々だ。

細かな輝きを散らし、鋭く光る銀の髪留めには、竜の目を思わせる群青色の石が埋められている。

重なるパール色をした衣は、回復の湖の如く透き通り、その輪郭は大気に溶けるようにぼやけていた。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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