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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第九話 再生 
114/133

(2)




 「やかましい……」




魔女の体から炎が引き、苦痛に満ちた濁声が空気を震わせる。




「小癪な……愚かな……忌々しい人間の分際が!」




全身が焼け焦げても尚、ただれた斑模様の皮膚に黒い血を伝わせながら、淡い紫に灯した杖を大きく宙に振り上げた。

だが、間髪入れずに竜の青い眼光が、その場を明々と照らして包む。

強過ぎるそれに目が眩み、痛く、手や腕で遮るのだが、容赦なく瞼の裏まで入り込む。

魔女はまるで、その眼光に全身を締め上げられるような感覚に陥り、声を上げて苦しみ、蹲る。

竜はその隙を窺うと眼光を抑え、髭を操り始めた。

球体型鉄格子の中で、三人に抱き寄せられていたリヴィアとジェドをそっと引き上げる。




 ジェドが地面に下ろされるも、リヴィアは掴まれたままだった。

三人は彼女を受け止めようとするが、竜は彼らに引き渡す事をせずその場から遠ざかってしまう。




 シェナは離れていく竜を引き止めようと手を伸ばすが、竜は、辺りに立ち込める濃い灰色の靄の先に、リヴィアと共に呆気なく消えてしまった。






 「どうして……」




フィオは不安と恐怖に満ちた声で呟く。

ビクターも不安に目を震わせながら眺めていたが、すぐさま横たわるジェドに振り向く。

何か異変が起きている事に気付いた彼は、目を見開くとジェドの体を叩いた。




「ジェド起きろ!」




その声にフィオとシェナがしゃがんだ。

ジェドの服は電流で焼け、部分的に裂けている。

激しい火傷によって流血もしていたが、今はその傷がどこにも見当たらない。

また、竜の眼光を浴びる前よりも顔色が良くなっていた。




「返事してよ!」




フィオは、ジェドの頬を必死に叩きながら叫ぶ。

ビクターは彼を背中から起こし、座位を取らせると更に揺さぶった。




 そしてようやく、彼は薄目を開いていく。

シェナはそれに気付くとすぐさま彼の背後に回り、ビクターを無理やり退かすと力強く背中を引っ叩いた。




「てっ!」




その声にフィオが感涙し、彼を抱き締める。

そこで、後の三人も気付いた。

これまでに負った傷が、すっかり完治している。






 「いつまでも……おめでたい奴らだ……」




竜の眼光の苦しみから抜け出た魔女が、濁声を地に這わせる。

震える身を起こすと、端に虚しく転がる先端が折れた杖を取り、四人に激しく牙を剥いた。

黒と青の血で全身が汚れ、ローブは完全に焼失し、まるで人間の血を浴びたような赤黒い衣姿で、こちらを睨め上げる。

肌の爛ただれが一層、奇怪さを強調させていた。




 その姿に四人は怯むも、意を決して立ち上がる。

ビクターは魔女に視線を向けたまま、地面に転がっていた下部の槍を拾そっとい上げた。

フィオはその剣を、ジェドは自分の槍を、シェナはナイフに力を込める。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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