(17)
魔女は赤い眼光を鋭利に放ち、憤怒する。
燃え滾る焦燥は、シェナの首を掴む杖に更に熱を生んでは迸る。
首を掴んでいる杖の先端から、黒い木の根のようなものが這い出たかと思うと、軋みながらシェナの首筋を這い上った。
それを目撃したフィオは堪らず彼女に駆けたその時――天井から放たれた二発の矢を、左腕と右大腿に食らってしまった。
フィオは激痛に転倒してしまう。
ビクターが彼女を叫ぶ傍ら、意識を朦朧とさせながら目を開いたジェドは、その空気を察して焦る。
「お前達纏めて流してやるよ……」
魔女の声に興奮する天井の敵が着地した。
魔女はシェナを掴んだ杖を乱暴に抜くと、手荒に肩に引っ提げては片方の手で爪を立て、掌を上向きにしたまま持ち上げる動作をする。
動きと共に、転がっていた球体型の鉄格子が揺れ始めると、傾きが整っていく。
中では、口元以外のほとんどを岩肌に変え、動かなくなったリヴィア。
彼女は両肘を肩の位置から吊り下げられた状態で、弱々しく揺れていた。
四人は言葉を失い、震える。
魔女がそれを不敵に笑うと、全身から紫の光を淡く放った。
赤い眼光が増幅すると、降下した下部達が身を怯ませながら声を上げ、魔女に慌てて頭を垂れて静止する。
突如、低い笑い声が響き始めた。
その声は魔女から放たれているが、これまでのものではない。
まるで、違う何かに中身が摩り替ったようだ。
「見よ……貴様ら人間が生み出したガラクタで……
この世に残る汚れ諸共消し去る……
地球は再生し、我が手に……
汚れを知らぬ新たな姿へと導く……」
しかしその声のどこか遠くには、元の魔女の声も重なっていた。
心底から振動させる悍ましい声はやがて、高らかに嘲笑を上げる。
四人は発言の意味が分からず、ただただ息を震わせた。
そして魔女が緩やかに宙を煽いだ矢先――リヴィアがいる鉄格子が浮かんでは激しく壁に減り込んだ。
青い電流が、鉄格子から連結される管を通過して下の階へ瞬く間に消える。
再び揺れを観測し、外からは恐ろしい地鳴りが響き渡った。
ジェドは身を起こすと、フィオに駆け寄る。
ビクターは背中の激痛に耐えながら、身を返すとライフルを握った。
その姿に、声を変えた魔女が体から煌々と光を放ち、鼻で笑い飛ばす。
「貴様あの時の……いや、違うか……
だがその腕……彼奴ほどではあるまい……」
ビクターは理解不能な発言を睨む。
一体魔女は、自分を何と比較をしているというのか。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します