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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第八話 侵入 
107/133

(16)






 魔女はシェナに接近すると、彼女の髪を鷲掴みする。

乱暴に、舐め回すように彼女の首を左右前後と傾けては、心底楽し気に眺めた。




「触んなぁー!」




ビクターは怒りに任せて剣の敵を蹴飛ばすと、振り向きざまに魔女に向かってライフルを放った。

背に弾丸を受けた魔女は激痛の叫びを上げる。

それに被さるように、ビクターの悲鳴が上った。




 何事かとフィオが振り向いた時、ジェドが既に、背中を大きく切り付けられたビクターに疾走していた。

彼の余りの速さに目を疑ったフィオは、思わず恐怖する。






 ジェドは、駆けつけた先に立つ槍の敵を即座に殴り倒すと、更に槍を強奪した。

奪い返そうと反撃する敵だが、瞬く間に槍で貫かれてしまう。




 ビクターもまた、俯せのまま彼に恐怖の目を向けていた。

尋常でない動きはまるで、憑りつかれているのか。




 ジェドは、敵を貫いた槍を素早く抜くと踵を返す。

迫るのは、ビクターの攻撃の反動で剣を弾かれた敵。

彼はそれに槍を握り直すと、狙いを定めて反対側の壁に大きく薙ぎ払う。

敵が叩きつけられた真横にいたフィオが、短い悲鳴と共に身を竦めた。

彼の身に何が起きているのか。

敵は壁にやや減り込んでいる。

しかししぶとく、敵は更に彼女を襲おうと手を伸ばした次の瞬間――ジェドが投擲した槍がその顔面を貫き、息の根を止めた。

そこからは、静かに白煙が昇り始める。




 息を強く吐いたジェドは止まる事なく、自分の槍を抜き取ると魔女に身を屈める。

しかし



「ジェド止めて!」




フィオが堪らず飛びついた。




 魔女は胸元を大きく叩き、食らった銃弾を弾き出すと、混乱する二人の光景を鼻で笑った。




 まだ這い進むのがやっとのビクターは、ジェドの抑制に必死になるフィオに近付いていく。

彼女が彼を止めるのも当然だった。

人離れしたような手捌きが、異常に思えてならなかった。

今の彼は、いつもの彼とはまるで違う。




 「放せ! 邪魔すんな! どけ!」




それでもフィオは、猛り狂う彼の首と胴体に手足を絡めてでも抑え込む。

彼は暴走し、なりふり構わず敵を仕留めようとする。

こんなのは、ジェドではない。




「止めて! 止まって!」



「黙れ! 殺してやる! どいてろ!」




刹那、ジェドの額に重い衝撃が走ると騒ぎが絶たれた。

追いついたビクターが、出せるだけの力で拳を振り下ろし、ようやく彼は静まる。




「傑作だな!

そのザマでよくもまぁここまでやってこられたもんだよ!

何だったら相応しい姿に変えてやろうか」




声を上げる魔女はしかし、脇腹に深く打撃を食らって嗚咽を漏らす。

シェナは、喉に食い込む杖を支えに足蹴した。




「煩いっ……」




喉から打ち付けられている彼女は息をするのもやっとだが、嗄れ声で怒りをぶつける。

仲間を想う気持ちが、自身を奮い立たせていた。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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