(14)
皆は小窓の方へ集まると、頭を低くする。
天井に突き刺さる鉄棒の隙間から、鋭い白光が射し込んだ。
岩の欠片が雨の如く降り注ぐのを、端に転がるガラクタを咄嗟に盾にして防ぐ。
そのまま、天井を覗いた。
いよいよそこが砕け始めると、何かが轟音を立てて落下し、濃い砂煙が充満していく。
冷たい何かが肌に飛び散った途端、皆は悲鳴を上げ、恐る恐る落下物に目を凝らした。
そこには、球体型になった鉄格子が転がっていた。
幾つもの管と鉄棒が刺さるその中に、黒い物体が傾いた状態で静止している。
その光景にみるみる不安になり、ふと、肌に付着した液を見た。
粘着があるそれは、青色をしている。
「リヴィア!」
シェナの叫び声が響くと同時に、電流が辺りの管を這って床下に消えた。
その直後、外で爆発音が轟き、皆は咄嗟に小窓から外を窺う。
「ねぇあれ! 私達の島じゃない!?」
フィオが指差す湖に、稲光が僅かに走るのが見えた。
楕円形の孤島が水面に揺れながら映し出されている。
塔の麓から爆風による波紋が生じ、空島の湖一帯に広がると、淡い赤に灯る水平線が浮かび上がった。
美しいながらも不気味な光景は、寸秒の間に静寂を生むと、それを打ち破るように高々と水壁を上げてしぶきを散らす。
その中を縫うように、青白い雷が迸った。
反動で空島が大揺れし、皆の足が崩れ落ちる。
真下からは竜の悲鳴が、より一層皆を怯えさせた。
その様子を目の当たりにした魔女は、高々と笑い飛ばして言う。
「じきにこの地球もどうにかなっちまうだろうねぇ!
だが足りん。こいつ……忌々しい竜の魔法をいつまでも維持しよって……挙句の果てには自ら呪いに食らい付く有様だったがねぇ!
……ったく、己の身一つでどうにかできると本気で思っていたとは……どいつもこいつも……成果は歪む一方だ!」
語気を強めながら、魔女はリヴィアから四人に大きく振り向くと同時に、杖を真横に振る。
四人がありったけの憎しみを込めて魔女を睨みつけた次の瞬間、目前に陽炎の柱が数本現れた。
先に捉えたビクターが片腕で三人を抑え、身構える。
魔女は笑い、蛇の牙を光らせた。
「そうかい……ならお前からだ!」
陽炎の柱は赤い光を鋭く放つと、ローブを纏った下部に変化する。
鎌を振る一体が牙を剥きながら、ビクターに向かって突進した。
逃げ足の速い四人は透かさず左右に分かれ、攻撃を躱してみせる。
それと入れ替わりに、床に叩きつけられた刃の衝突音が甲高く響き渡った。
二手に別れた四人は体勢を整える。
そこへ、天井に空いた巨大な穴から覗き込む敵が、乱雑に矢を放った。
四人は間一髪それらから逃れ、壁の中央に向かって二方向に駆けていく。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します