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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第八話 侵入 
104/133

(13)




 ビクターは、先程ジェドが触れたものの両側にある別の物体に目を向け、首を傾げる。

まるでジェットスキーのハンドルに似たものが、縦に一本ずつ据えられていた。




「動かせそうだな」




ジェドは、どこか恰好いいそれらに釘付けになる。

左右、前後、旋回と、自在にスライド操作が可能なように思わせる、付け根の仕組み。

一体これは何をするものなのかと、四人の目移りは一向に止まない。




 そこへ、何かが引き摺られる音が響き、ジェドとビクターは肩を飛び上がらせてそちらを振り向く。




「見て! これ持って帰らない!?」




フィオとシェナが巨大な曲面ガラスを引っ張り出し、興奮していた。

見せられた二人は目を剥き、まじまじとそれを眺める。

瓶やレンズの大きさをしたそれしか見た事がなく、二人が手にするものは比較にならない。

やけに重く、厚みもあった。

部分的に広がる割れ目から、小さな破片が転がり落ちる。




「潜るのにそいつでゴーグル作ろうぜ」




ジェドが言うと、この場の危険をそっちのけに、どんどん周囲のガラクタにも興味をそそられた。




「見ろよ鉄だ! 絶対喜ぶって、おっちゃん達」




そう言ってビクターに突き付ける。

何かから剥がれ落ちたのか、四十センチ四方ほどの鉄板だ。

四隅に穴が開いており、どのようにして付着したのかが分からないほどの、酷い焼け跡が残っている。




「頑丈な物ばっか!

全部持って帰って道具作りに使いましょ!

船だって作れちゃうわ!」




シェナは目にする一つ一つから、生み出せそうな生活用品を想像した。

更に、床に落ちていた湾曲した細長い鉄棒も見つける。




 ビクターは手渡された鉄板を脇に置き、張り巡らされている大量の管に目を這わせた。

天井に突き刺さる鉄棒に繋がるそれらには、何かが中に流れているような気がした。




 「竜に頼んで運び出そうぜ」




ジェドは言いながら、シェナとフィオが何かを漁り続ける方へ向かった瞬間――あまりに多い足元の管に躓き、咄嗟に目の前に垂れ下がる別の管の束を掴んだ。

彼の全体重がかかったそれが天井から抜け落ち、雷のような軋み音が短く響く。

白光と共に放たれた破裂音に合わさるように、ジェドは激しく転倒した。




 皆は短い悲鳴を上げて身を縮める中、電流が稲妻の如く周囲の管を迸り、点滅していた板の光を消してしまう。

その場は真っ暗になり、緊張の息遣いに満たされていった。




 「……壊れたの?」




シェナの大きく瞬く目が暗闇で微かに光った時、気味悪い静寂はが徐々に、あの濁声の嘲笑に消されていく。

やがて、塔が揺れを起こした。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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