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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第八話 侵入 
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(11)




 侵入してすぐのところで、ビクターとフィオは身を縮めながら目だけで観察する。

辺りにみっちり広がる暗闇はまるで、西の海に潜ったような感覚だ。

円形の広間を観察し続けるうちに目が慣れると、奥の壁沿いに、岩でできた階段が見えた。

仰ぎ見ると、天井の穴に続いている。




「静か……」




不気味でならない空間に、フィオの小さな呟きがふわりとこだまする。




 辺りを見回していると、天井に何かがある事に気付き、目を凝らした。

長く、時に途切れてぶら下がっていたり、張り巡らされている物体。

ロープのようだが、違うのか。






 背後で壁を叩く音がし、フィオとビクターは慌てて振り返る。

シェナが窓枠から手を伸ばしていた。

二人は彼女の肩を掴むと、掛け声と共に引き上げる。

真下のジェドは、彼女の足を押し上げて補助した。

その後、彼が軽々と窓枠に乗っかると、そのまま真下の竜を振り返った。

こちらをじっと見上げている目は、どこか不安気だ。




「そこにいろよ」




ジェドは、願いを小さな声にする。

一時に比べて実に従順な竜は、身を顎下まで浸水させると、静かにそこに留まった。

 





 四人は身を寄せ合いながら、広間の中央まで移動する。

先程見つけたロープを思わせる物体は、天井から壁を伝って床まで伸び、更に下へめり込んでいる。

シェナがそれに触れようとしたが、そこには熱が帯びており、直ぐさま手を引っ込める。




「管……?」




ジェドは呟き、再び天井に目を凝らした。

四方八方に這って伸びるそれらの隙間から、点滅する白光が僅かに漏れている。

外から塔を見た際に目に留まったものと同じだろうか。

静かとはいえ、敵がいる可能性が高い。




「音立てんなよ」




ビクターが小声で指示すると、足を忍ばせながら階段を上がり始める。

三人もまた、慎重に彼に続いた。




 上り続けるうちに足場に違和感を感じ、皆は足を止めて警戒する。

一つ一つの段は非常に脆く、高さは不揃いだ。

縁から岩の欠片が小さく音を立てて落ちていく。

向かう先にぽつりと空いた穴のような入り口は、目と鼻の先だ。

白光が、その部屋を点滅させているのがより分かる。




 ビクターは、冷えた手でライフルに力を込め、深呼吸した。

背後のフィオも槍を握り、恐怖の目で点滅する部屋を凝視する。

シェナは武器ベルトに挿すナイフの柄に触れながら、震えていた。

それを見たジェドが、そっとその手を覆う。




「行くぞ」




シェナはジェドの声に息を呑み、小刻みに頷いた。

リヴィアを助け、島に帰るためにも、怖がってばかりではいけない。




 ビクターは身を屈め、階段が崩れ落ちないよう、また、自分も落ちてしまわないよう慎重に上り始めた。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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