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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第二話 唸声
10/133

(5) 




 「見ろ。フィオのやつ、行く気満々だ」




ビクターは船縁から彼女の位置を指しながら、ジェドを振り向かせる。

ジェドはブラシの手を止め、遠くの桟橋を見た。

こちらに気付いた彼女は、何か動きを見せる。




「何か言ってんぞ」




 見るとフィオは大きく手招きし、西の方角を指差していた。




「すぐ出るんだろうな」




ビクターは踵を返すとブラシを肩に乗せ、足早に去る。




「波落ち着いてねぇぞ」




ジェドは慌てて彼の後を追った。






 二人は急ぐ最中、フィオとシェナの分の食料もしっかり確保する。

そしていよいよ漁船から駆け出そうとするのだが




「随分とお急ぎだな」



「あー」




ビクターは上手くかわせずについ声を上げながら、マージェスを見た。

二人を捉えた彼の表情からすると、行動はお見通しといったところか。




「用事だ」




そう言うビクターの背後で、ジェドも立ち止まっている。




「言い訳はいい。今日だけはやめろ。

ジェド、お前もだ」




ビクターの肩に、マージェスの大きな厚い手がのしかかる。




「いやいや待ってよおっちゃん」




ビクターは笑いながら、彼の手をそっとどかした。




「今まで危なっかしい事してきても何ともなかった。

何でって俺がついてるからだ。だから大丈夫!」



「開き直るな!」




駆けようとするビクターにマージェスが腕を伸ばすが、彼は滑らかに躱される。




「走れ!」




ジェドを連れてビクターは全力疾走した。

民家の間をみるみる擦り抜け、無言で枝分かれし、互いに自宅に向かう。






 マージェスは溜め息を吐く。

あっという間に姿を消した二人を眺めて立ち尽くしていると、作業を終えて漁船から現れたカイルが苦笑した。




「何言っても聞かないだろう。そういう年頃だ。

西だ、何かあればすぐに助けに行ける」



「今日はいつも通りに終わる気がしないから俺は……」




四人がしている事は、お遊びが過ぎるところもある。

珍しく参った表情を浮かべるマージェスを横に、カイルは四人が集まるであろう桟橋を振り返った。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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