あおとアオ
甘い手に誘われ、僕は彼女の手を取る。
彼女の手に連れられ、何処かへ行く。
目の前には青い色が広がってくる。青春の色と呼ばれる、それに。
あおい海に飛び込んだ。
泡ぶくが視界で弾け瞬いた。
*
..きっかけは名前。
偶然か必然か。
僕の名前『蒼』と彼女の名前『碧』。
それは驚くほど綺麗に重なりあったから、お互いを特別に感じ合った。
..それから、僕と葵は二人っきりでいつもいた。
悲しいときも嬉しいときも腹立たしときも楽しいときも、僕らはくっつき合う。
まるであの綺麗な万華鏡のようだった。
..けど僕は不思議に思った。
僕が碧に近づけば近づく程、周りにいた友人たちは僕を避け始める。そればかりか、誰も僕という存在に目も向けない。
もう僕には彼女のところしか、居場所が空いていなかった。
....僕はだんだんと分かってきた。
碧は凄く寂しがり屋だから、ずっと側に居てほしいみたい。
碧は不器用な女の子だから。僕しか知らないから。
*
深いあおい底へ沈んでく。
僕は碧を抱き締め、碧は僕に寄り添う。そうやって、不安をなくしていく。
蒼と碧が行きたかったのは、二人だけの居場所。どこまでも二人っきりの遠いところ。
僕らはそっと、キスし、あおい炭酸に溶け出す。
これが二人で決めた、あおとアオの形。