あなたのおかげで
雑踏
懐かしい風が香る
すれ違った風を追って
振り返ると一瞬
あなたが見えた
あの頃
いつも同じ歩幅で歩いてくれた
どんな私になってもいつでも
追いかけてくれた
何度振り返ったろう?
そのたび、そこにはあなた
「大丈夫。いつも見てるから」
優しい笑顔
「ショボくれた田舎は嫌い」
私の言葉
「ショボくれたくなったら帰っておいで」
あなたは笑って送ってくれた
何千回嫌いになったろ?
何万回傷つけたろ?
それでもあなたは
いつでも笑って
「あんたはあたしにそっくりだよ」
あなたの呼ぶ声がする
私はいつでも嬉しかった
くじけそうな涙声の電話
「そろそろ諦めかたを覚えるかい?」
そんな優しさに触れるとなんだか
「まだいらない。まだやりたいことがあるから」
私は突っぱねる
破り捨てる帰郷のチケット
あなたの呼ぶ声がする
私はいつでも嬉しかった
呼び続けることが
愛だと知った
私もきっと
あなたと同じ笑顔ができる
だって私は
「あなたにそっくり」なんだから
今ならなんのてらいもなく言えるよ
「愛してるよ、ママ」
「2018年10月26日」