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 自殺をした振興組合会長山田和夫夫婦の死体のそばにあった子供は、同級生4人の秘密として子供の出来なかった尾瀬の子として育てられることとなった。

 尾瀬信之 その4

「俺みたいなものでも来て良かったのかな。邪魔じゃないのかな」

 藤城が遠慮気味に言うと、

「何言ってるんだよ。この4人は同級生だよ。これからは皆んなで助け合って末長く付き合いをするって約束の会なのに、藤城君、君が遠慮してどうするんだ」

 打田はもうリーダー気分で藤城に注意をした。

「打田さん、どうして君は弱い立場の人にはきつい態度に出るんだよ。これからもそんな態度を続けるようだったら僕は許さないよ」

 高畑が打田を厳しく叱った。

「ちょっと、これから皆んなで楽しく飲もうかって言うときに何だよ、ここは一旦落ち着いて何か美味しい料理を出してもらおうよ」

 尾瀬が皆を制して飲み会を始めることになった。

 その夜、居酒屋“うっとり”に集合した4人は、初めてそろって飲むとあって、学生時代の思い出話に花が咲き、最初の雰囲気とは違い、お酒もどんどん進んで笑いの絶えない楽しい時間を過ごしていた。

 突然、打田が切り出した。

「今だから確かめておきたいことがあるんだけど、今日の尾瀬先生の行動は僕は納得出来ません。死体の確認をしに河原へ下りて行った時、ペチャペチャになってたカバンを持って行ったんです。でもすぐ戻ってきたと思ったら、カバンがパンパンになってて、そして隠すようにそそくさと、一度病院に戻ったじゃないですか。まさか死体のそばにあった大金を、誰も来ないうちに独り占めしようとしたんじゃないですか」

 その話を聞いて、高畑は警察官の顔になって

「打田さん、急に何を言うんだい。尾瀬先生が本当にそんなことしたら犯罪者になっちゃうじゃないか。いきなりそんな話しを切り出すと、折角初めて同級生がそろったのに飲めないじゃないか」

「でも、どうしても今ここで納得しないと、僕はこのままずっと尾瀬先生を疑い続けることになるんですよ」

 打田はこの質問をしたかったのか、他の3人と比べていつもより酒の量が少なく思えた。そして、この飲み会では言葉少ない藤城が重い口を開いて言った。

「肩書のない僕が言うのはおかしいけど、“さん”とか“先生”とか止めて“君”で呼ぶようにしたらどうかなぁ。だって同級生だもん。そして僕も打田君が言うように尾瀬君のカバンの件は確かに不自然だったと思うよ、ずっと見てたから、だから尾瀬君もう正直に話したらどうですか、その代わりどんなにやばい話になっても絶対公言はしないって、皆んなが約束して欲しいんだ。高畑君、警察官だからって君も同じだよ、僕たちと同じ立場になって、このことは胸にしまっておいて欲しいんだ」

「藤城君の言い方だと、尾瀬君は間違いなく隠し事があるって疑っているみたいじゃないか。そんな事は無いよね尾瀬君」

 高畑は尾瀬をかばうように言ったが、もし尾瀬が犯罪につながるような発言をした時、警察官である自分は黙認できるだろうか気弱になって行くのが分かった。そして尾瀬が観念したように語り始めた。

「僕はもう犯罪者になっているかもしれない、実は最初に河原へ下りて行った時、死体を見るより先に赤ん坊が目に入ったんだ。仮死状態でバスタオルに巻かれて二人の死体の真ん中に置かれていたんだ。そして小さなメモに(この子を頼むって)書いてあったんだ。早く手当しないと死んでしまうと思い、とっさにカバンに押し込め、誰にも悟られないように取り敢えず自宅に運んで女房に託して、診察器具を撮りに行った振りをしたけど、やっぱりうそは付けないものだね。見てる人は見てるんだ。途中女房に連絡したら、息を吹き返してとっても元気な赤ちゃんだって、それを聞いた時、前から子供が欲しいとずっと思っていたから、検視が済んで家に帰った時赤ちゃんと添い寝をしたんだよ。そうしたらどうしてもこの子を手放せず、二人の子供として育てたくなったんだよ。本当はもっと子供のそばに居たかったけど、それを相談したくてここに来てるんだ。僕はどうしたらいいんだろう」

 打田は尾瀬がお金を持ち去ったと告白するのを期待していたが、当てが外れたことで逆に気が楽になったのか、尾瀬の心境に寄り添うような態度に変わっていた。

「もし誰もその子の引き取り手がなかったら、孤児院に預けられるんだよね。そんなことになったら可哀そうだよ。亡くなった振興組合の会長さんの意志を尊重すれば尾瀬君以外3人は今年に男の子が生まれているから、尾瀬君も黙って生まれたことにして育てたらいいんじゃない。僕らが絶対内緒にしておけばいいんだよ。ねっ高畑巡査部長」

「バカ!打田君はそういう風に言うから俺は怒るんだよ。とにかく今は皆んなと同じ立場で相談したいんだ。もしもこの話が誰かに知られたらどうするんだ、尾瀬君も大変だけど本音を言えば君たちに任せて俺は逃げ出したいよ」 

 打田、尾瀬、高畑には偶然同じ年に男子が生まれたが、尾瀬には妻が病弱でとても子供がそなわるはずがないと自分でも公言していただけに、今回の事件の後、突然子供が出来たとあっては、世間にどのように説明するのか高畑は心配したが、尾瀬は平然とした態度で話し始めた。

「実は病院を半年掛けて改装した時、今まで長年勤めてくれた看護師さんや事務員さんはこれを機会に全員辞めて、今いるのは皆んな新しい人達なんだ。だから女房の事も何にも知らないんだ。第一別宅で生活をしてたからほとんど病院も覗かなかったし、外も出歩かなかったから近所でも謎の人になっていたんだ。だから子供が出来ても誰も疑わないよ。それだけは僕は自信もって隠し通せるよ」

 高畑はもしこの事がばれたら俺は警察をクビになる。でも尾瀬の為皆んなも絶対公言しないと誓うなら俺は従うと約束した。そして皆納得したこの秘密が益々4人の絆を深めることとなった。

 尾瀬信之の出生の秘密が分かり4人の父親たちの絆が深まる中、その子供達も同級生としてどんな関わり方をするのか今後が楽しみです。

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