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 闇の軍団の壊滅を目的とする医療探偵団として組織を立ち上げ、臓器移植された人間の異常行動の瞬間を観察し、その原因を追跡することになった。

青山賢司 その6

「梶今五月之介さんが高山警察署長として復活されたみたいですよ。整形手術で全く元のまま復元されたそうですから、休んでみえたことがうそのように違和感が無いですね」青山が出勤途中に署長とすれ違ったらしく所長に語り掛けた。

 でもこの空白だった期間色んな悔しい思いがあったから、その分頑張ってほしいですね。いずれは警察庁に戻られる方だけど」所長も梶今五月之介に同情するように答えた。そんな二人の会話に時には重要な内容も含まれることがあるので、無関心を装いながら皆んな聞き耳を立ていた。

 所長が突然緊張した面持ちで、青山に伝えた。

「皆んなにそろそろ本当のことを伝えなければならないことがあるんだ。まだ誰も気づいていないかもしれないけど、とても重要なことだから慎重に人選しなければならなかったんだ。このメンバーで3年一緒にやってきて、君を含め全員合格だ。今日午後からその詳細を皆んなに伝えるので会議室に集合してほしい。休んでいる職員にも連絡してくれないか」

 勤務以外はパチンコ漬けという太田正夫は、家族から緊急連絡があったと携帯で呼び出され、不満げに出勤してきた。10分遅刻だった。

「みなさんお揃いですね。これから話すことは驚くかもしれないけど、この施設の名称は表向き感染症患者隔離センターとなっていますが、ご存知のとおり臓器移植の技術向上を目的として活動をしてきました。しかし、これからは臓器移植された人間の異常行動を追跡しどんな組織が関わっているのか解明して、闇の軍団の壊滅を目指します。もう臓器移植手術は積極的にはやらなくていいんです。これからは私達は医療探偵団として活動します。ですから私達の存在を家族にも誰にも絶対明かしてはいけません。この3年間皆さんを観察してきましたが、このメンバーなら大丈夫だと確信しました。

 具体的な任務は徐々に伝えていきますが、早速始めてほしいことは二人一組で市内中を歩いて回って出会った人間が異常行動を起こす瞬間を見つけてほしいんです。その時何かを刺激するような音とか光とかあるはずだから。今日は初日ですので余り無理をしないように、目立たないようにお願いします」

 早速ペアとなった藤城茂樹と主任の古田なじむは、記念すべき第一号として本来なら新聞に写真付きで大々的に報道されるところではあるが、内密ということもあり、質素に肩のあたりで小さく手を振り、小声で(ガンバって)ってと皆んなに静かに祝福され街頭へと出発した。

「先輩! 僕はこんな探偵ごっこするために医者になった訳じゃないのにちょっと納得出来ません」

 藤城茂樹は皆んながいる事務所では言い出せない不満を吐き出すようにぶちまけた。

「僕も同感だよ。何でこんな仕事しなきゃならないんだよ。家族や誰にも自分の仕事のことばらしちゃいけないなんて、ふざけてるよ」

 普段はおとなしい古田なじむも、結婚してようやく子供が生まれ、今は仕事より家庭を優先したいばかりで、夕べも妻から(お互い隠し事はだめ、秘密なんか絶対ゆるさないわ)なんて釘を刺された矢先に秘密をかかえて暮らすなんてと藤城に同調していた。

 探偵ごっこをするために医者になった訳じゃないと、不満をぶちまける藤城に同情するように、古田も家族に秘密に暮らすなんてと同調していた。

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