来月の人事異動で新規に施設管理者が来ると、対外的な対応は任せられるので、所長は自分の負担が減るとほくそ笑む。
青山賢司 その5
「ところで急な話しだけど来月に人事異動があって、ここに施設管理者のポストが新規に出来るんだ。この管理者の仕事というのは事務を司る役目なんだけど、私は所長として技術部門の総括者だから今まで以上に医療専門に関われることになれるし、臓器移植に関してはもっと専門的に踏み込んで研究をやらせてもらえるかもしれない。
でも極秘の仕事だから目立ってはいけないんだけど、その施設管理者に長谷川真一という人が市役所から来るらしいよ」
所長はこれからは、自分が苦手な対外的対応は施設管理者に任せられると、ほくそ笑んでいた。
「その長谷川さんって、市役所の副市長の? だったら、とっても優しい人で信頼できる人だから良かったですね。今まで上司にはあんまり、いや全くと言っていいほど恵まれて無かったですから」
藤城は陰で皆んなが所長の悪口を言ってるのを聞いていたので、何の戸惑いもなく安心してストレートに発言してしまった。
「その上司って私の事かい?」所長は自分が言われているとは気が付かず、こんな優しい人間は何処を探してもいないとまるで他人事のように、わざと膨れた顔ですねて見せた。
すかさず、藤城が「もちろん所長の事ですよ。いつも自信が無いから僕たちに何でも振ってくる。だから皆んなが迷惑してるんです」
所長は穏やかに過ごす毎日の中で、皆んなからそんな風に思われていたと思うとショックで黙り込んでしまった。
所長の機嫌がそびれたことにも気づかず、藤城は続けた。
「長谷川さんは臓器移植で人の体を借りて生き返ったって言われている梶今五月之介さんの奥さんの兄さんなんですよね」
「ーーー、ーーー」
「あれーーっ、所長、あれだけしゃべっていた人がどうしたんですか」
「ううーん、なんでもないけど」
所長はまだ引きづってるようだった。でも、気を取り直して
「そう、副市長と兼務だそうだよ。そうするとこの施設にはめったに顔は出さないから、やっぱり僕がここの責任者になるってことか、がっかり」
所長は自分自身がリーダシップに欠ける人間だと分かっていたので、施設長が来ることで責任も逃れられると目論んでいたのだが、当てが外れてしまった。
「ところで兄さんの梶今さんは今どうしているんだろう、臓器移植の事は今皆んな話題にしていないけど」
突然青山が所長と藤城の話しを遮るように割り込んできた。
「臓器移植では、闇の軍団が関わっていると一時噂になっていたけど、久仁崎市長がその芽を摘み取って壊滅したことになっているんだ。だけど、そんな簡単な話じゃ済まないよね。その後どうなったのか誰も知らないんだ。皆んな口に出さないだけで心の中では不気味な気持ちがモヤモヤと残っていると思うよ」
所長は今までの出来事を振り返りながら、急に暗い顔になった。そして続けた
「このハエ細菌は、移植手術の最中に臓器に電気処理を行った課程で、偶然生まれたものだと私達は踏んでいるんだ。闇の軍団も自分たちが生み出したものなのに、まだ気づいていないのかもしれない。だから今朝の人間が消滅したというニュースで、細菌の仕業って気づいたら大変なことになるぞ」
所長は自分が想像する世界と直面している現実が同時進行で、どんどん深みにはまって行く未来に恐怖を感じるのだった。
なかなか良いストーリーが浮かばず3ヶ月休んでしまいましたが、ようやく新たな展開を考えましたので楽しみにしていてください。ブックマークが付かないのが悲しいです。




