人を食べつくすという恐怖のハエ細菌も飛騨桃ジュースの効果で彼らに気付かれず、短時間で死滅させることができ、全国に分散している仲間を高山に呼び寄せて管理出来るようになった。
青山賢司 その4
「この細菌も蜂と同じように女王が支配して行動するんです。だから女王を見つけたらテニスボール位の量をガラスの入れ物に入れて抹殺したい人物に振りかけると、どこからともなくものすごい量の仲間が集まってきて、あっという間にその人物を食べつくすんです。ガラスの入れ物は普通のガラスではダメ、細菌が嫌う電気処理をしたものでないとすぐに穴をあけて逃げ出すから」青山は独自で研究したのか、すでに色んな情報を掴んでいるようだった。
「でも、今のニュースで知る限り、この研究所で初めて発見された事象かと思ったら、どうもすでに全国に広がっているんだ。しかし、このことに気づいたのは私達が最初かもしれない。そうであってほしいんだけど、取り敢えず名前をハエ細菌としておこうか。でもこうしている間にも、日本中このハエ細菌が浮遊しながら増殖していると思うと恐怖を感じるよ。青山君どうすればいいんだろう」
「所長! 僕はいいアイデアが浮かびました。このハエちゃん達と仲良くなって、色々活躍してもらうんです。ひとつはゴミ焼却場で管理してもらって、ゴミの処理に役立たせるのです。市内から集められたゴミを一時収集所に保管しておくと、決まったサイクルで彼らがゴミを食べてしまうので、永久にゴミは増えないことになります。
そして彼らが排出した豆腐のような物体で紙の原材料に活用するんです。すでに純白の繊維に仕上がっていますから、そのまま紙をすいて和紙にしたり、印刷用紙やトイレットペーパーなど何でも加工できます。もう森林の伐採は必要なくなります。
そしてこれが一番重要だと思いますが、ちゃんと金属を分別してくれるところです。金や銀はもちろん日本では手に入りにくい希少金属いわゆるレアメタルも紙すきの段階で不純物として取り出せるから、もう簡単な作業で収集出来るのです。
こういった作業は清見小学校藤瀬分校に通う子供達の将来の職業として準備しておくのはどうでしょう。ここまではイメージとして分かってもらえると思いますが、もし可能なら原子炉から環境中に放出される放射性物質も安全な物質に変換してくれたらこんな有難いことはないですよね」
「君はすごすぎるよ。すぐにでも実行できそうな気がしてきた」
「まずは、国内に散らばっているハエ細菌達を全部この飛騨高山に呼び寄せて管理しなければならないね。彼らが喜んで飛んでくるような魅力のある物を考えなければならないし、彼らが集まったら、ガソリンとかガスのように安全に管理する方法で対応出来たら環境問題も解決するし、いいことずくめだよ」所長は急に元気を取り戻し、年甲斐もなく小躍りをして見せた。
その後ハエ細菌の大好物は桃のジュースで、特に飛騨桃を使うと彼らを上手にコントロール出来ることが分かった。研究員の藤城茂樹が桃の缶ジュースを飲みながら顕微鏡を覗いていたが、突然大きなくしゃみで一緒に口から飛び散った桃ジュースが霧状に飛び散りハエ菌達をおとなしくさせてしまったのだ。
千倍に薄めたものを彼らに振りかけると成長速度を早め、短時間で死滅する。まるで殺虫剤のようだが、どんどん集まってくるので、数を制限するのに役に立つのだ。そして何より彼らに気づかせず、猫がマタタビで酔うように彼らも喜んで夢を見ている間に、人間たちを恨んだり、攻撃することなく、人生を全うするのだ。
こうして、桃ジュースのアイデアで全国に分散しているハエ細菌を高山に呼び寄せて管理できるようになったのだ。
彼らはゴミの廃棄物を餌とし、排出する豆腐のような物体は、紙製品に加工したり、同時に金属を分別したするので、彼らを上手に管理すれば、簡単な作業で環境に役立つことが分かった。




