防犯カメラを確認して分かったことは、遺体が31日周期で消滅するということ。そして道路に大量に落ちていた白い塊には、希少な金属やハエのように羽の生えた細菌の死体が大量に含まれていた。
青山賢司 その2
「とにかく、防犯カメラを再生してみよう。何か見たこともないような動物、例えば大量のツチノコがエサをあさっていたらワクワクするね」
「所長! ふざけてないで早く見てください!」
夜警の高田に急かされ、所長は録画されたテープをカメラから取り出しビデオデッキにセットした。
「えーーっ、何なの遺体があっという間に溶けて、跡形もなく消えちゃったじゃないか。これはどういうことなんだ」所長の上の歯と下の歯がかみ合わずガタガタしている。
このことがあって、毎日防犯カメラを確認して気づいたことは31日周期で遺体が消滅することが分かった。
「所長! 出勤途中の道路でみんなが車を止めて大騒ぎしてたんです。車から降りて何が起きてるのか確かめてみたんですよ。そしたら真っ白の物体がアスファルトの上に落ちていて、何やら大量の豆腐みたいなきれいな塊でした。一部もらって来ましたので、早速成分を調べてみます」
研究員の青山賢司は嬉しそうに研究室に入って行った。そして叫んだ。
「所長! 大変です。電子顕微鏡で見ましたら、なんと!」
「青山君、所長! 所長!って叫ぶの止めてくれませんか。その度にびっくりして心臓が破裂しちゃうよ」
「所長! だってこれ見てください。あの真っ白な塊の中に金属のようなものが沢山含まれています」
「どれ、あっ! ピカピカ光ってる。これって金や銀みたいだ。そしてその他金属らしいものが沢山ある」
「所長、もう少し調べてみます。ただ、僕は生物が専門なので、どこまで調べることが出来るか分かりませんけど」
「やれるところまで頑張って見てよ。保管庫の遺体と何か関係あるかもしれないから」
「所長! そしてハエがいっぱい死んでいるんです」
「バカ言わないでくれ。顕微鏡の倍率を等倍にしてるんじゃないのかい。正体が何か知らないけど、羽根が生えてる細菌なんて聞いたことないぞ」
「でも、どう見ても形はハエですよ」
「君はいつも騒ぎすぎ! どれどれ、うわーーっ! なんじゃこりゃ、正にハエじゃないか」
「所長! ハエの幼虫ってサルモネラ菌や腸炎ビブリオ菌に似てませんか」
「確かに、ということは食中毒を起こす菌が脱皮をして、羽根の生えた虫に進化したということか、ハエは餌を舐めるようにして吸収するけど、これはブヨが人間の血を吸うように、肉に噛みついて食べるんだ。何でこんなことに! 細菌がハエに進化できるのは、何万年も何億年も掛かるんじゃないのかね。今まで誰も気づかない訳がない。例えば放射線を浴びたことが原因とか、核実験で無人島にいた生物が放射能を浴びて巨大化して日本を脅かすなんて話は随分前にあったけどね、でもそれは映画の中だからね」
「私も科学者の端くれですので、誰も想像もしないような事象を考えて、実際に起きたら楽しいだろうなとか、細菌に羽根が生えて飛び回るなんてことは、幼い頃からすでに考えていたことなので、特別驚きはしませんけど、現実に起こってみるとやっぱりそういうことってあるんだって思いますよね」
「青山君! 君ってよく冷静でいられるよね」
「だって、僕の中では想定内ですもん」
遺体が消滅する原因は羽根の生えた細菌の餌になっていたこと、そして、資源のリサイクルに活用できる白い塊が道路に大量に落ちていた。この二つはどんな関係があるのだろうか。




