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棚橋孝太郎が新聞から色々な情報を吸収するかたわら、悪ふざけをする一面も

棚橋孝太朗 その2 

 ある時、川尻弘樹部長のところへ、取引先の社長である皆越敏夫が挨拶に現われた。孝太朗はまたしても、来客用のテーブルで新聞を読んでいた。

 川尻部長は、皆越社長をそのテーブルに掛けるよう勧め、事務員にお茶を出すよう伝えた。孝太朗は皆越社長が隣の椅子に腰掛け、そして向かいに川尻部長が座ったにもかかわらず、一向に自席に戻らず新聞を読み続けている。

 川尻部長は困って「孝太朗君席に戻って仕事をしなさい」と言うと、ようやく気付いたように席を立った。しかし、新聞を読みながらである。

 孝太朗は、仕事に必要と思われる情報を、経済新聞や地方紙からどんどん吸収をしており、今も正にこの記事を読んでおくべきと、集中している瞬間だったのである。

 皆越社長は小声で「いったい彼はどういう男なんですか」と川尻部長にたずねた。部長も眉間にシワを寄せ、「彼は棚橋社長の孫なんですよ」と困ったようにささやいた。

 そんな中、皆越敏夫社長が「昨日はめずらしく休みをもらったので、女房と二人で近くのスーパーに出掛けたんですよ。そうしたら私は知らなかったんですけど、川尻部長さんの奥さんとうちの女房とがもう友達というか、かなり親しい間柄で顔を合わすなり、私をそっちのけで長い話を続けてましてね、私はどうしていいのか、しばらく他を回って時間をつぶして来たんですが、まだしゃべり続けていました。

 よほど仲がいいんですね。ところで部長さんの奥さん、なかなかきれいじゃないですか」「そうです!」と大きな声で川尻部長が答えた。

 そして続けて、「きれいじゃないです」しかし、みんな意味が分からなかった。確かに社内ではきれいだと評判ではあったが、普通川尻部長なら「いやーーぁ、きれいだなんて、とんでもないです。あんなおたふくが、はずかしいです。」と言うだろうと誰もが想像していたのに、なぜか言ったと思われる川尻部長本人もきょとんとしている。

 実は孝太朗がふざけて、部長の後にかくれて答えていたのだった。そうですと肯定しているのに否定している不思議な会話に、皆んながもう一度心の中で復唱してみた。

 社長「奥さん、きれいじゃないですか」部長「そうです!きれいじゃないです」誰かがこのおかしさに気づき、クスクスと笑った。そしてあちこちクスクス、そして職場全体が大爆笑となり、もちろん社長も部長も大笑い、社長は大喜びで帰っていった。

 また別の客が今度は北野守課長のところへやってきた。社内でも古参の岩下政恵である。

「あーら北野課長さん、この頃ちっとも顔出さないわねぇ。どうしてなのよ。誰かいい人でも見つけたのかしら」

「何をおっしゃいます。もし妻がいなかったら、今頃あなたと幸せに暮らしていたかもしれないんですよ。あなたはいつまでも若くてきれいだから、残念で仕方ありません」北野課長は精一杯歯の浮くようなお世辞を並べ、みんなも苦笑していた。

「あら、ぼうや、私は課長さんと長い付き合いなのよ。私は岩下政恵、皆んなこの美貌からみんなが岩下志麻って呼んでるの。ちゃんとおぼえておくのよ」

「そんなおばさん忘れようとしても思い出せない。あれーーっ顔を見たらシワだらけじゃん、岩下志麻というよりシワシタシワだね」

「まぁ失礼な子ね、頭に来たわ、課長さん私くやしくてどうしたらいいの」と言いながら課長の横の背もたれイスに手を掛けたが、キャスター付きだったため、スーッと移動し、岩下政恵はつかまるところがなくなりそのまま倒れ、思いっ切り顔をバーンとぶってしまった。

 孝太朗は、誰よりも一番に駆け付け手を貸すと思いきや、倒れた政恵のスカートがめくれ上がって、パンツが丸見えになっているのを見て、ほくそ笑んだ。「今日のパンツはラクダ色なんだぁ」

 岩下政恵は、はずかしさの余り、がばっと起き上がると、孝太朗のほっぺたを両手でつまんで引っ張り、孝太朗が痛い痛いと訴えても手をゆるめる気配もなく、あまりの痛さに涙があふれた頃ようやく手を離し、その瞬間バシッとほっぺたを張り付け、あちこちの机の角で膝を何度もぶつけながら部屋を出て行った。

 孝太朗は、それから一週間ほっぺたの腫れは引かなかったが、政恵も足を引きずりながら廊下を歩いていたとのこと。その事件が社内に広まった頃、あの根性悪ババアをギャフンと言わせた孝太朗に、みんなが賞賛の声を送った。

 1ヶ月ほどして、シワ伸ばしローラーを頬に当てながら、再び岩下政恵がやってきた。

「この間は、はずかしい姿をお見せして大変失礼しました。この子のお陰で私は目覚めたの。それでダイエットとこのローラーで頑張ったわ。坊や今日から会社では、私がお母さんになってあげるから、たくさん甘えていいのよ」確かに岩下政恵はそれは見違えるほどやせて、きれいになっていた。

 孝太朗は、まるで母に甘えるように、政恵の胸の中に顔を埋め、「ごめんなさい。僕は悪い子でした。これからはお利口さんになります。お母さん」と言ってワーンと泣いた振りをして、みんなの方を向いた時、赤い舌を出していた。

 その後岩下政恵は、取引会社の一つ、松下商事の社長に見初められ、寿退社となったが、社長はとても温厚で、再婚であったが、いつも笑顔の絶えないそれはやさしいと評判の男だったので、孝太朗は少し寂しかったが、政恵はいい人に巡り会ったと安心するのであった。

 ある日、同期に入社した桶谷優香は、社内でも可愛いと注目されつつあった頃、川尻弘樹部長に書類を届けにやってきた。

 社員が多数で初めて訪問する職場とあって、緊張しながらそーーっとドアを開けた。

「総務課から来ました桶谷優香です。川尻部長さんに書類を届けに参りました」とこわごわ部長に書類を渡し、さっと帰ろうとした時、部長は若い子だからと人前で握手する訳にも行かず「おーーぉ、これは可愛い。君は今年入社した子だったね、これから毎日、君が僕のところへ書類を届けに来てくれたまえ、待っているからね」と精一杯の笑顔で愛想した。

 北野課長も負けていられない。すかさず「それはダメですよ、これからは課長の私の方に先に届けてね、私が部長さんに渡しますから。分かりましたね」そんな会話に耳を貸さず、早くその場から立ち去りたい桶谷が、入って来た入口が分からず、ちょっとウロウロした時、孝太朗の得意な実況中継が始まった。

「あーーっ、可愛い社員桶谷優香がドアをあけ谷ーー、あんな狭いすき間もいけ谷ーー、受付簿しっかりかけ谷ーー」桶谷は皆んなから注目されている自分を知り、さらに緊張度は増すばかり。

「あーーっ、足がもつれてこけ谷ーー、ありゃーー、その瞬間スカートがさけ谷ーー、どうしょう中がすけ谷ーー」あまりのやつぎ早に桶谷は完全にもたつき、倒れた拍子に顔を床にぶつけてしまった。

 やはり孝太朗はチャンスとばかりに掛けより、手も貸さず「今日のパンツはピンク色でしたーーぁ」桶谷はあまりのはずかしさに、孝太朗を見つけると、すぐ様両方の手でほっぺたを掴みパシッとたたくと、振り向きもせず部屋を出て行った。

 そのことがあり、彼女はうけ谷ーー、きけ谷ーー、ふけ谷ーーなど名前でもて遊ばされたが、同時に社内人気NO1の女性となっていった。

棚橋孝太郎の社内での日常を表現しています。まだまだあどけない様子が伺えます。

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