高原と栄子はこの事件を切っ掛けに結婚し妊娠もしていたが、二人が生き返ったことで、この事実が城田の記憶から消えていた。。
城田英雄 その5
城田はとりあえず二人が事件に巻き込まれて、死亡するという事件は避けられたと安堵するのだった。
時空をひとっ飛びして電車に戻ると、二人は周囲の乗客を気にすることなく大声で談笑していた。
どうしたら元の世界に戻れるのか悩むまでもなく、また突然渦巻の中へ吸い込まれ、気づけば元の新聞保管庫に戻っていた。そして乗せていた新聞記事から手をどけると、城田は驚いた。あの殺人事件が乗客を助けたとして賛美される高原の記事と写真に変わっていた。
図書館を出、駐車場に止めておいた車に向かいながら、見慣れた二人連れとすれ違った、栄子と高原である。
「図書館なんて珍しいんじゃない、城田さん」と栄子が話しかけてきた。
城田は『君たち生きていたんだ。よかった。』と声を掛けるつもりであったが、事件のことは全く知らないようなので、やっと今までこの二人のために奮闘してきたのに、お礼も言われないなんてと内心むかつきながら聞いた。
「やっぱり二人は一緒になったんだね」
「えーーっ! 何で、電車に乗るとき俺が栄子さんを助けたからそれが縁で 3年前に結婚したじゃないか、市民なら誰もが知っていることなのに、君も結婚式に来てくれた時、祝辞はうんざりするほどこの話ばかり聞かされただろ。もうボケちゃったの」
でも、高原は二人が結婚したことを今初めて知ったのである。
「あっ、ごめん、今日はどうしても調べたいことがあって,朝一番に来て今までかかったんだけど、全然見つからなくって、イライラしてたから」
英雄はそう言ってごまかした。
「城田君、コーヒーを今朝から飲んでないんだよ。向かいの喫茶店で休まないかい。話したい事が有るから」
高原と栄子の命を救った城田に、何やら二人は話したいことがあるようだ。




